2018年11月16日(金)

EU離脱、派生商品6000兆円不安定に 英中銀など警告

Brexit
ヨーロッパ
2018/10/10 18:46
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【ロンドン=篠崎健太】英国の欧州連合(EU)離脱を巡り、英・EU間のデリバティブ(金融派生商品)や保険など金融取引の継続性に不安が強まっている。英中央銀行のイングランド銀行は条件合意なしの「無秩序離脱」の場合、最大で41兆ポンド(約6000兆円)のデリバティブが不安定な状態に置かれると警告。関係機関に対応を促した。

英国のEU離脱まで残り半年を切るなか、金融システム上の懸案になっているのが、様々な価格変動リスク軽減などに使われているデリバティブの扱いだ。取引の相手方となる中央清算機関として、欧州では英ロンドン証券取引所グループのLCHクリアネットが圧倒的なシェアを握る。合意なし離脱に至ると、今のEUの規制では欧州の金融機関が同社を使えなくなる。

英中銀が9日に発表した声明によると、在英の中央清算機関が取り扱うEU企業のデリバティブ残高は、想定元本ベースで69兆ポンド(約1京300兆円)に上る。このうち41兆ポンドが、2019年3月末のEU離脱後に満期を迎える。EUの法体系から切り離された場合、既存の契約がどう扱われるか定まっていない。

英中銀が懸念しているのは、取引の継続性確保に向けたEU側の対応が遅れているためだ。英国側ではEUのサービスの継続利用を可能にするための法対応が進められている。英中銀は9日に発表した金融行政委員会(FPC)の声明で、EUについて「進捗が限られている」と強調した。離脱後も英機関を取引相手として認めることが当面の手立てとなるが、現時点で具体的な動きは見えない。

保険契約の扱いも宙に浮いている。英中銀によると、英保険会社が提供するEU市民向けの契約のうち、約900万件について、合意なし離脱に至った場合に、どのような扱いになるのかは不透明だ。

態度を留保しているEU側はもともと、離脱を機にデリバティブ清算拠点など金融センターとしての機能を英国から奪う思惑を持ってきた。だが無秩序離脱の懸念もくすぶるなか、万が一のリスクを無視できなくなっている。欧州証券市場監督機構(ESMA)のマイヨール長官は3日、ギリシャで講演し「英清算機関の利用を続けられるようにする必要がある」との認識を示した。

EU離脱に伴う金融システムリスクへの懸念の声は広がってきた。国際通貨基金(IMF)は9日公表した世界金融安定報告で、英国からEUへの拠点移転などで金融機関の取引コストが高まったり、リスク管理が複雑化したりする課題があると分析。欧州内の取引拠点の分裂によって金融取引の流動性が低下する可能性なども指摘した。

金融派生商品の業界団体である国際スワップ・デリバティブズ協会(ISDA)も9日、合意なり離脱に至った場合のデリバティブ取引への悪影響を指摘する報告書を発表し、関係当局の迅速な対応を促した。

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