米中間選挙、円高にざわめく市場
米中間選挙もカウントダウンに入り、市場はソワソワ落ち着かない。「選挙は何が起こるか分からない」とはいえ、単に傍観してはプロとしての存在が問われかねない。
そんな折、米ニューヨークのトレーダーたち20人ほどと「電話会議」の機会があった。2時間ほどのセッションで、話題はやはり中間選挙だった。
まず、選挙予測としては、7割がたが、上院共和党、下院民主党勝利によるねじれ議会を見込む。
その場合「トランプ相場で育ってきた」NY株式市場も、短期的には、調整不可避との見方が目立つ。
同じ銀行出身者たちのカジュアルな集まりなので、民主党支持のヘッジファンドが、「本音は共和党が勝ってトランプ相場の勢い(モメンタム)が失われないことを望む」とのコメントが笑いを誘った。
中期的には、「誰が大統領になっても、米国経済のファンダメンタルズが強いので、株価も調整後は反発」との意見が多数派であった。
日本を話題にしてみたのだが、「円高」予想が印象に残った。
まず、下院民主党勝利となれば、米国金利上昇に歯止めがかかる。ドル買いポジションが巻き戻される。更に、短期的なマーケット波乱でリスクオフの円買いも生じる。今回の中国、イタリア発のリスクオフで、強いドル高基調のなかでも円だけが買われたことが注目されているのだ。
なお昨晩は、トランプ大統領が再び米連邦準備理事会(FRB)利上げを批判した。
「FRBはやるべきことをやっている。しかし、私は気に入らない。これだけは言っておく。インフレは抑制されている。利上げをそれほど急ぐ必要はない。経済指標は記録的に良い数字なので、水を差したくない。我々は金融を正常化させているが、借金も返済せねばならない」
「この件について、パウエルFRB議長と話していない。私は関与しない」
この最後のコメントは新たな発言として注目される。言いたいことは言うが、FRBの政治的独立性は尊重すると解釈されるからだ。
ただし、中間選挙前に株価が急落するような局面があると、トランプ氏のFRB口撃がエスカレートする可能性はあろう。

豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
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