銀行送金、夜・休日もすぐに システム9日から24時間対応
銀行送金のシステムが9日、大きく変わった。これまでは平日午後3時以降や休日に振り込むと、翌営業日にならないと相手に届かなかったが、メンテナンスに要する時間などを除けば原則、いつ振り込んでもすぐに着金する。LINEなどフィンテック勢の24時間送金サービスに対する危機感などが背景にある。便利になる半面、振り込め詐欺などの不正を助長するリスクもある。
銀行間の振り込みは全国の金融機関をつなぐ「全銀システム」を経由している。これまでの稼働時間は平日午前8時30分~午後3時30分までで、「他行への振り込みは午後3時まで」といった制約を生んでいた。
全銀システムを運営する全国銀行協会は9日、午後3時半以降に稼働する「モアタイム」と呼ぶシステムを追加。給与や賞与の振り込みをのぞく1億円未満の送金を、24時間365日できるようにした。全銀協によると、これに伴い振込手数料を引き上げた金融機関はないという。大手行の場合、3万円未満の他行への振込にかかる手数料は200円程度のままだ。
全銀協によると、三菱UFJ銀行や三井住友銀行、りそな銀行などが9日午後のスタート時から参加。信金中央金庫など全国組織を通してシステムに接続する信用金庫、信用組合を含めると当初から参加する金融機関は計504にのぼる。
実際に夜間、休日に振り込むには送金元と振込先の双方の銀行が新システムに対応していることが条件となる。全銀協の調査ではシステム接続機関の9割超が平日・土日の少なくとも午後9時まで接続、約6割は24時間対応すると答えている。
一方、みずほ銀行は2019年度上期までかけて次期システムの移行作業を進めており、当面は参加しない見通し。農林中央金庫も当初は参加せず、全国のJAバンクも対象外となる。
原則24時間送金できるようになることで、今後は平日午後6時にネットバンキングで他行宛てに振り込んでも、すぐに処理されるようになる。親元を離れた子供が事故や病気で急にお金が必要になった時にも、柔軟に対応できるようになる。また夜の会食にかかったお金をその場でネット送金して割り勘するという使い方もできる。
ネット通販の利便性も高まる。これまでは銀行口座を通じ代金を支払う場合、平日午後3時以降に振り込むと、着金は翌日だった。発送はそれからになるため、即時決済するクレジットカード払いに比べ到着が遅れることがあった。こうした事態が減る可能性がある。
一方、24時間化によるリスクも考えられる。懸念が強いのが「振り込め詐欺」などの特殊詐欺だ。これまでは振り込みから着金までに時間差があったため、振り込んだのが夕方以降なら、水際で被害を食い止められるケースがあった。今後は詐欺グループがいつでもすぐにお金を引き出しやすくなるため、被害を防げない可能性が高まる。全銀協も加盟行や利用者に注意を呼びかけている。
法人取引でも、経理処理などでの残高確定時間の変更や、平日の入金を前提としたサービスや契約の見直しを迫られる可能性がある。かつて金融機関が破綻した際には、金曜日の営業時間後に資産や負債を救済金融機関に移し、月曜日から預金を引き出せるようにするいわゆる「金月処理」がセーフティーネットとなっていた。週末も企業間決済などが続けられるようになれば、これを見直す必要も出てきそうだ。