ブラジル大統領選、28日の決選投票へ 左派候補劣勢で市場は好感
首位の極右候補は市場原理重視 所属政党は下院選で勢力拡大

2018/10/9 18:44
保存
共有
印刷
その他

【サンパウロ=外山尚之】7日投開票のブラジル大統領選で軍出身の極右候補、ジャイル・ボルソナロ下院議員(63)が得票率46%で首位となり、29%で2位の左派候補、フェルナンド・アダジ元サンパウロ市長(55)と共に28日の決選投票に進む。市場では財政再建に消極的な左派の劣勢で構造改革路線が続くと受け止められ、8日の外国為替市場では通貨レアルが対ドルで2%上昇。主要株価指数のボベスパも4.6%高となった。

ボルソナロ下院議員

アダジ元サンパウロ市長

7日、リオデジャネイロで、ボルソナロ氏が1位で決選投票に進出することを喜ぶ支持者ら=ロイター

ボルソナロ氏は構造改革を推進する立場。2016年に発足したテメル政権は政府支出の上限設定など財政規律をはじめとする構造改革を進めてきた。ボルソナロ氏はテメル路線を一部修正する可能性を示すが、改革路線は維持する構えだ。

ボルソナロ氏は7日夜、交流サイト(SNS)を通じて動画メッセージを配信。政権獲得後の財務相候補に指名した市場原理重視の経済学者、パウロ・ゲジス氏をそばに置いたうえで「ブラジル(経済)は崖っぷちにある」と主張。当選した場合には国営企業の民営化をはじめとする構造改革を進めると説明した。

8日の株式市場でボベスパは前週末比4.6%高の8万6083で取引を終えた。銀行に金利引き下げを求め国営企業の民営化に反対するアダジ氏が当選する可能性が低下したとの見方が広がり、銀行株や国営石油会社の株が買われた。

投資仲介大手スピネリのチーフアナリスト、グラウコ・レガチ氏は「議会でボルソナロ氏を支援する勢力が膨らんだことも市場で好感されている」と分析する。

ボルソナロ氏が所属する右派の社会自由党(PSL)は下院で8議席の小政党だった。だが7日の同日選だった下院選で52議席に伸ばし、同院で第2勢力となった。加えて農業団体系、キリスト教福音派などほかの政党や議員からボルソナロ氏支持の表明が相次いでいる。同氏が当選すれば「国営企業の民営化や年金改革などの政策を進めやすくなる」(レガチ氏)というわけだ。

経済面を除けばボルソナロ氏への支持拡大は国内で驚きをもって受け止められている。女性、黒人、同性愛者などに対する差別発言への反発は根強い。1985年まで約20年間続いた軍事政権を治安や社会の規律の面から称賛する。弾圧や拷問という負の側面を持つ軍政の支持はブラジルではタブー視されてきた。

同氏は「ブラジル人の雇用が優先されるべきだ」と述べ、移民受け入れには慎重だ。民政移管後は左派政権の時代が長かったブラジルでは、こうした立ち位置が相対的に極右と位置づけられる。

「ブラジルのトランプ(米大統領)」とも呼ばれる極端な発言が選挙で注目を集めるための戦略なのか本音なのか、世論は見極めきれずにいる。

一方、第1回投票でのボルソナロ氏の勝利について労働党が擁立する2位のアダジ氏は「民主主義の危機」と呼ぶ。同氏は人気のルラ元大統領が汚職で収監され、裁判所の判断で出馬できなくなったことで差し替えられた「代替候補」だ。終盤の支持率の伸長で「左派嫌い」の有権者をボルソナロ氏の支持に向かわせたとみられている。

アダジ氏は決選投票に向け、左派陣営の結集を目指す。得票率12%で3位だったシロ・ゴメス元財務相(60)ら左派系の候補が協力を示唆。低所得者を中心に左派勢力への支持も根強い。

投票日直前に公開された世論調査ではボルソナロ氏、アダジ氏はいずれも支持率を不支持率が上回った。決選投票は「不人気投票」の色彩が漂う。7日に最大都市サンパウロでゴメス氏に投票したという大学教授は「(決選で)汚職まみれの労働党を応援する気になれないが、ボルソナロ政権よりはマシだ」と話す。

ブラジルでは選挙で投票が義務付けられる。こうした「消極的支持者」の動向が無視できない。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]