2018年12月13日(木)

今日も走ろう(鏑木毅)

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紅葉を求めて山へ 非日常の空間、心を前向きに

2018/10/11 6:30
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日本は列島の中央をまるで背骨のように山脈が連なり、実に国土の70%が山地帯だという。これほど山が身近にありながら、日本の山のみどころは過小評価されがちだ。欧米の雄大な氷河の景観や、地平線まで続く大海原のような絶景に比べると確かに物足りないかもしれないけれど。

しかし趣のある森を形成する日本列島の緯度と海洋性の気候、そして複雑な地形が織りなす山地景観は世界に類をみず、魅力があふれている。とりわけ秋の紅葉は色鮮やか。晩秋になれば葉が落ち冬枯れるさまも興趣がつきない。

山歩きには絶好のシーズンだ。日本で登山といえば、頂上を目指すスタイルが多い。山頂からの眺めは格別だし何より達成感が得られるかもしれない。だが日本の山は得てして急峻(きゅうしゅん)で、頂上を目指すなら急登を上りつめるルートが多く、山を楽しむというには少々難しい。アップダウンの少ない森を楽しめるルートを探してみよう。

紅葉の安達太良山を走る

紅葉の安達太良山を走る

たとえば日光の刈込湖、切込湖のルートは静かな森と湖、そして紅葉のコントラストが必見だ。福島県の安達太良山は渓谷沿いや高台から美しい紅葉を見ることができ心躍る。森の静かな雰囲気を存分に味わいたければ、北八ケ岳や富士山御殿場口五合目付近に広がる富士山自然休養林の森だし、西日本では滋賀県の琵琶湖西岸にそびえる比良山地の森もおすすめだ。いずれも妖精がすみそうな荘厳な雰囲気。広葉樹の枝葉の間から差し込む光が美しく、潤いのある森を楽しめる。

首都圏から比較的近距離で楽しめるフィールドは箱根だろう。中級レベルとしては箱根湯本から金時山へ向かうルートが正面に富士山の絶景を楽しめ、落葉樹林の落ち着いた雰囲気と明るく開けた稜線(りょうせん)歩きなどの景色のバリエーションを楽しめる。同じ箱根でも手軽な散策ルートとしては、芦ノ湖の西岸のトレイルがよいだろう。観光客でにぎわう湖畔とは正反対の静寂に包まれた湖沿いの道へと進めば、箱根の新たな魅力を感じるはずだ。

山は良い汗を流すこと以外に精神面でプラスアルファの効果もある。ランニングは脳の前頭前野を刺激するためアイデアが多く湧き出るが、山という非日常の空間に身を置くとそれ以上の効果があるようだ。何を隠そう、この連載の構想も山や森の中で練ることが多い。

さらに山は私たちの心を前向きにし、行き詰まった状況を打破する力を与えてくれる。苦しい時にはその心を軽くし、楽しい時にはその気持ちを増幅させる。現代の便利な生活環境にいる私たちが、あえて不便で疲れる山へと足が向くのは、日常を乗り切るヒントを山が豊富に秘めているからかもしれない。日本の山は一見地味なように思えても私たちの心を癒やす何かを持っていると思うのである。

(プロトレイルランナー)

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