2018年12月19日(水)

ブランド牛、山里けん引 ヴィレッジホーム光末社長 光末幸司氏
広島発「風は西から」

中国・四国
2018/10/7 6:00
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新幹線も高速道路も通っていない広島県神石高原町。人口減が進むこの町で、農畜産業のヴィレッジホーム光末は着実に雇用を増やし、地域ブランド牛の供給拡大を目指す。社長の光末幸司(42)のモットーは「何も無いとは言わせない」。繁殖農家から肥育農家への飛躍も視野に、11月には3500万円を投じて新畜舎建設に乗り出す。

神石牛のブランド普及のため肥育農家への飛躍を目指す

実家が工務店だったため、大学では構造力学を学び広島県竹原市の測量会社に就職した。だが父が体を壊した2002年に帰郷。家業を継ぐ傍ら、兼業していた農地3ヘクタールも引き継いだ。自分で値決めして道の駅に出すと思った以上に売れ、農業の面白さに目覚めた。

地域農業の担い手となる集落法人化には20ヘクタールの農地が必要だった。新聞広告も使って18ヘクタール集めたが、2ヘクタール足りない。その時、牛1頭が1ヘクタール分に換算されるのを知った。近所の牛農家の助言も受け畜産進出を決めた。

世話をすればするだけ手応えを感じられる牛の仕事も面白くなってきたある日、1頭の牛が死んだ。「管理が不十分だった」。自分を責め、号泣した。それを見た就学前の息子が言ってくれた。「父さん、僕が牛を守るよ」。牛の世話に本気になったのはそれからだ。やがて頭数も増え、今は親牛32頭、出荷前の子牛15頭を育てている。

町は今春、神石牛を町産品ブランドとして認定した。ただ神石牛の出荷頭数は年間400頭余り。町内で生まれた子牛が神戸や三重・松阪で育ち、神戸牛や松阪牛として売られていく例も多い。ブランド普及には供給増が不可欠だ。

このため光末は肥育にも乗り出す。まず11月に60頭が入る牛舎を着工、年内に完成させる。19年度にも20頭分の牛舎を造る。牛の増頭費用も含め総投資額は約3500万円。うち2千万円は、町が町勢拡大を支援するために設けた基金を充てる。新牛舎で繁殖牛を80頭に増やし、その後に肥育も手がける。数年後には50頭の肥育牛を育て、牛舎も新設する計画だ。

地域力を高めようと、担い手づくりにも力を入れる。16年から毎春1人ずつ農業技術大学校(広島県庄原市)の卒業生を採用、19年春も畜産コース卒業生が入社する。「祖父が牛飼いの子で『5~6年修業して祖父の後を継ぎたい』との考え方にほれた」という。

17年に入社した河上瑞樹(22)は農業機械に乗り慣れていたためコメ担当になった。光末の「悩む前に動け」との言葉に従い、種付けの資格も取った。「多くのことを学ばせてもらえて楽しい」と前を向く河上に、光末は「農機の扱い方ひとつ取っても優れている。もっと伸ばせば面白く成長する」と目を細める。

子どもたちに「おいしい神石牛を食べた」という思い出を持ってもらうため、学校給食に神石牛を出したいと願う。そして少人数でも雇用を継続していれば「進学で町を出た子も、いい思い出と雇用の場があれば、就職で町に戻って来るかもしれない」。できることをやることで地域を守り続ける。=敬称略

(福山支局長 増渕稔)

みつすえ・こうじ 1976年広島県神石高原町出身。大阪産業大工卒。測量会社を経て02年実家の光末工務店に。08年社名変更し農業生産法人に。42歳。

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