貿易戦争で米に攻められる防衛市場 先端技術で日本生き残りへ
三菱重工の潜水艦が進水 リチウムイオン電池を搭載

2018/10/4 18:37
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三菱重工業が防衛省から受注した潜水艦「おうりゅう」が4日、神戸造船所(神戸市)で進水した。潜水艦として初めてリチウムイオン電池を搭載する。蓄電容量が増えることで、エンジンを回さずにより長く、静かに潜航することができる。貿易赤字の解消を狙う米トランプ政権は日本政府に武器の輸入拡大を迫るが、日本の防衛関連企業は技術革新を進めて生き残りを目指す。

音楽隊の演奏の中、進水を祝う日本酒の瓶が割られ、全長84メートルの巨体がドックごと海水に沈んでいった。基準排水量は2950トン、水中での速力は約20ノット。進水後も様々な作業が続き、海上自衛隊への引き渡しは2020年3月の予定だ。

おうりゅうは05年から建造するディーゼル駆動式では世界最大級の「そうりゅう」をベースにした11番目の潜水艦。最大の特徴は鉛蓄電池に代えて、GSユアサ製の高性能リチウムイオン電池を搭載した点だ。一般に同じ個数、サイズであれば、蓄電容量は2倍程度に増えるとされる。

新型潜水艦はディーゼルエンジンを回して発電した電気を蓄電し、実際の作戦や戦闘の際には電池からの電力だけで艦を動かす。エンジン音を消し、敵に見つかりにくいようにすることで優勢に戦う。リチウムイオン電池を搭載することで、行動半径や水中での活動時間が大幅に向上した。

ただ、華々しい進水式とは裏腹に、三菱重工幹部の表情は険しい。米トランプ政権が貿易赤字解消へ防衛装備品の購入拡大を日本に求めており、国内企業の受注を奪われる懸念が強まっているからだ。9月下旬の日米首脳会談でも安倍晋三首相がトランプ大統領に「米国品を含め、高性能な装備品を導入することが重要」と伝えたばかり。

近年、米国からの武器購入は有償軍事援助(FMS)が増えている。完成品を購入するため、ミサイル防衛システムの「イージス・アショア」のように高性能の武器の確保につながる一方、国内の防衛産業への恩恵は乏しい。FMSでの調達額は11年度まで1000億円以下だったが、18年度には4000億円を超えた。

産業の裾野の拡大につながると期待される武器輸出も停滞している。安倍政権は三菱重工や川崎重工業が建造してきたそうりゅう型のオーストラリアへの輸出に注力したが、16年にフランス企業に敗れた。川重が手掛けるP1哨戒機の輸出も実現していないうえ、F2戦闘機の後継機の国産化にも暗雲が垂れこめる。

その中で、艦艇は造船業の基盤が厚い日本が独自技術を持つ。商船事業で中国や韓国勢に押され、防衛事業でもFMSに攻め込まれている重工大手にとって、性能への評価が高い潜水艦は残された「牙城」だ。

おうりゅうは三菱重工が建造するそうりゅう型の最後の艦。今回の建造で培ったリチウムイオン電池などの最新技術は次の3000トン型潜水艦にも使われる見通しだ。国産防衛装備の技術力を維持し、国内の防衛産業の基盤を保てるか正念場を迎えている。

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