イライラが軽くなる ネガティブ感情のリセット習慣

怒りっぽい自分が嫌、不安で心が押し潰されそう。そんな人は、負の感情のコントロール法を身に付けよう。怒りが湧きにくく、小さなことに幸せを感じられる――。怒りを抑えるアンガーマネジメントを身につけ、ポジティブ体質を目指そう。
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「怒りや不安は感じて当然。無理に抑える必要はありません」と話すのは、日本アンガーマネジメント協会理事の戸田久実さん。「ただ、負の感情をコントロールできないとヒステリックな人と思われ、信頼を失うことも」。感情の整え方はぜひ身に付けたいたしなみだ。
重要なのは、あらゆる感情を生んでいるのは他でもない自分だと知ること。「すると感情は自分で整理整頓すべきものと分かり、不機嫌を人のせいにしない、精神的に自立した大人になれます」。負の感情の整理法と、ネガティブ体質の改善法をダブルで実践し、いつもゴキゲンな私になろう。
湧き上がってくる負の感情は4マス整理で対処
不安や怒りなど日々湧く負の感情は、4マスの表で整理しよう。鍵は「自力でコントロールできる・できない」と「重要か否か」を勘案すること。コントロール可能で重要性が高いものは、建設的な対処法を考えて、即実行。自分ではコントロールできず重要性が低いものは、「気にするだけ損」と割り切ろう。

4つのステップで感情を整理

【事例編1】取引先がいつも締め切りを守らないのが、我慢ならない!!
<STEP1 問題の中身を具体化> A社の担当者B氏が何度言っても締め切りを守らない。上司に企画書を提出できず、私が叱られる不条理な状況。
<STEP2 コントロールできるか検証> 他社の社員をコントロールはできないが、非常に困っている状況が理解されれば、A社が何か対策を講じてくれるかも。
<STEP3 重要かどうか検証> A社とは長い付き合いだし、B氏も企画力は優れているので、良好な関係を継続していくことは非常に重要。
<STEP4 必要なものを即座に行動> A社に改めて締め切りを守るよう伝え、それでも改善されない場合、遅れることを見越して締め切り日を早めに設定。
【事例編2】遠くない将来、親の介護をしなくてはならないと思うと不安…
<STEP1 問題の中身を具体化> 不安要素は、1親が要介護状態にならないか、2仕事と介護とを両立できるか、3介護費用を用意できるか、の3点。
<STEP2 コントロールできるか検証> 将来親がかかる病気は現時点では分からないので、1はコントロール不可能。2と3は自分でコントロールが可能。
<STEP3 重要かどうか検証> 2と3共に、自分自身の将来の生活を支える働き方やお金に関することなので、重要度は非常に高いといえる。
<STEP4 必要なものを即座に行動> 2は会社の介護休業制度などを確認、3は親が望む介護の形を聞き、親の貯金や行政の介護サービスなどを調べる。
強い感情にはこうして対処
【引きずる怒り】→視点を「過去の相手」から「未来の自分」に転換
引きずる怒りは、過去の相手に向いていた視点を、「輝く未来の自分」に転換して断ち切る。「原因がなんであれ、自分と未来のみを見つめ、変えようがない相手と過去は切り捨てて」。
【深い悲しみ】→無理に蓋をせず、涙を流すことは大事
「大事な人を亡くした」などの深い悲しみを、4マスで整理するのは無理。「悲しいときは無理をせず、泣くほうがいい。泣くと副交感神経が優位になり、心が落ち着きます」
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ネガティブ体質は3つの感情ログで整理
日々湧き上がる怒りを記録し、観察すると、「自分は何に、なぜ怒るのか」の傾向をつかめる。怒りを客観視できるようになると、怒りの感情自体が湧きにくくなり、長く引きずることもなくなる。さらに幸せや成功体験を記録すると多幸感と自己肯定感がアップ。感情がネガティブからポジティブへ"体質改善"され、落ち込みにくくなる。
1【アンガーログ】カチン、イライラ、モヤモヤの記録
怒りを客観視でき、自分の傾向をつかめる
イライラや腹立たしさは、理由が不明確なままストレスとしてたまりがち。小さな"カチン"から噴火レベルの怒りまで、こまめに記録すると、つかみどころのない怒りの原因を客観視できるようになる。職場や家庭など、自分が怒りを感じやすい場所も特定できる。
いつ、どこで、どんな出来事があり、それに対してどう怒りを感じたのかを、日誌の要領でノートやスマホに記録する。怒りの強さも10段階で分かりやすく数値化しよう。なぜ怒りを感じたのかなどの分析は書かなくて大丈夫。

2【ハッピーログ】うれしい! 楽しい! ほっ! の記録
小さな幸せに目が行き、ストレスが減る
うれしい、楽しいなどのハッピーな感情を記録するログ。書き続けていくと、それまで見逃していた小さな幸せに気づけるようになり、考え方が徐々にポジティブに。ストレスの総量も減っていく。

3【サクセスログ】できたこと、うまくいったことの記録
自己肯定感が高まり、ネガティブ感情が減る
仕事やプライベートで「やった!」と感じた体験を書く。続けると「うまく対処できている」「周囲の役に立っている」と実感。「どうせ私なんて」とのネガティブ感情が薄れ、自己肯定感が高まる。
成功体験というほど大きく構えず、ハードルをできるだけ低くして、日常のささやかな達成感を書き出していこう。

気の重くなりがちな週の始めと半ばにハッピーログで元気を出し、金曜夜にサクセスログで1週間の達成度合いを実感しよう。アンガーログは怒りを感じるたびに。その場で書けないときは、落ち着いてからでいい。


(ライター 籏智優子)
[日経ウーマン 2018年9月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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