ドイツ、苦肉のディーゼル延命策 選挙対策の側面も

2018/10/2 22:35
保存
共有
印刷
その他

【パリ=深尾幸生、ベルリン=石川潤】独政府が巨額の費用負担を自動車大手に強いる大気汚染問題対策を導入する背景には、ディーゼル車のイメージダウンとメルケル政権の政策実行力に対する批判を食い止めたいという思惑がある。月内に重要な地方選挙を控え、世論の関心が高い大気汚染による走行禁止問題の幕引きを急いだようだ。

「ディーゼル車の未来を守るためだ」。アンドレアス・ショイヤー運輸相は2日の記者会見で強調した。スベンヤ・シュルツェ環境相は「費用は車両所有者ではなく自動車メーカーが負担すべきだ」と述べた。1台平均3千ユーロとされる改修費用の8割をメーカーが負担、2割を政府が負担することで自動車メーカーと交渉している。

ディーゼル車の市街地乗り入れ規制の広がりは、ドイツの自動車大手が強いディーゼル車の逆風になってきた。最新モデルは乗り入れ規制の対象外にもかかわらず、消費者の拒否感は強く、メルケル政権も自動車業界を擁護しきれなくなった。問題を放置すれば、怒りが「決められない政治」に向かいかねない。

独フォルクスワーゲン(VW)や独ダイムラー、独BMWなどのトップは9月23日にメルケル首相らと会い、対策を話し合った。奨励金については合意したとみられるが、車両改修についてはBMWが拒否するなど実現性には疑問も残る。日本メーカーや仏メーカーなどが改修に合意するかも不透明だ。

自動車産業の核としてまだディーゼル車が必要という点では、政府と独自動車大手の利害は一致する。ただ、今回の対策でディーゼルに吹く逆風を止めることはできるかは不透明だ。

2015年に米国で発覚したVWによるディーゼル車の排ガス不正事件以降、ディーゼル車のイメージは悪化。英仏は40年までにガソリン車やディーゼル車販売を禁止、ドイツでも2月に連邦行政裁判所が走行禁止を容認する判決を出した。

米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によると16年の世界販売でディーゼル比率は19%。欧州ではなお48%を保ったが、今後はディーゼル離れが加速し、30年には12%まで落ち込むと予測する。

今回の大気汚染対策の背景には、政権の支持率の低下もある。今年3月に発足した第4次メルケル政権は、難民の流入阻止や情報機関トップの解任を巡って政権内の対立が表面化。「内輪もめばかりで重要な課題に向き合っていない」との批判が高まっていた。

メルケル氏がディーゼル問題について「次の月曜日に最終決定する」と表明したのは、ぐらつく政権運営について謝罪した9月24日の記者会見の席だった。国民の関心が高いディーゼル問題の解決を通して、政権の再スタートを印象づけたいという思惑がにじむ。

ドイツは10月にバイエルン州、ヘッセン州の州議会選挙を控えている。バイエルン州のミュンヘンは今回の措置の対象となった。バイエルン州では与党の苦戦が予想されていることも、メルケル氏の背中を押した。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]