高知の図書館に寄付10年 ヤマキン会長 山本裕久さん(語る ひと・まち・産業)
学ぶ環境で若者呼ぶ

2018/10/3 12:00
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 やまもと・ひろひさ 1951年大阪市出身。近大理工学部卒業後、75年に山本商店(現YAMAKIN)入社。79年社長、2007年から会長就任。11年に高知工科大学大学院工学研究科博士課程修了。博士号取得。大学でベンチャービジネス論の講義なども担当する。

やまもと・ひろひさ 1951年大阪市出身。近大理工学部卒業後、75年に山本商店(現YAMAKIN)入社。79年社長、2007年から会長就任。11年に高知工科大学大学院工学研究科博士課程修了。博士号取得。大学でベンチャービジネス論の講義なども担当する。

■7月に高知市中心部に高知県・市が開館した図書館複合施設「オーテピア」に「ヤマキン・ライブラリー」と名付けられた一角がある。高知県香南市に製造拠点を置く歯科材料メーカー、YAMAKIN(ヤマキン、大阪市)の山本裕久会長(66)や社員の寄付を活用。これまでIT(情報技術)やプログラミング関連を中心に約4000冊を購入した。

「県立図書館へは、ちょうど10年前、県の地場産業大賞の地場産業賞を受賞し、副賞の賞金10万円などを寄付したのが始まりで、毎年100万円の寄付を続けている。プログラミングやウェブデザインの専門書は値が張る。若者が知識や技術を高めてもらうのに役立ててもらおうと考えた」

「7月のオーテピア開館に合わせ1千万円を寄付した。本選びはすべて司書に任せているが、AI(人工知能)関連や外国語の書籍などに幅を広げてもらえればいい。高知には感性に優れた若者が多い。マンガの得意な新入社員用に専用のイラスト作成ソフトを会社で購入したところ、どんどん勉強してステップアップしていった。きっかけや材料があれば若者は伸びる」

■父親が高知県出身だった縁で、1991年に高知県香南市に進出した。今は製造機能はすべて同市に移した。自らも高知に住んで30年近くになる。

「進出から2~3年は誰も採用面接に来てくれず、県庁の職員などが一緒に高校などを回ってくれた。不良品を出した時には、県工業技術センターが原因究明に協力してくれて危機を乗り切れたこともある。熱い気持ちを持った高知の人たちに助けられた」

「大学卒業後、大学院に進みたかったが、会社を手伝わねばならなくなり断念した。その思いもあり高知工科大学の大学院に1期生として入学した。博士号の取得までに10年間かかったが、そこでできたネットワークは財産だ」

「論文を書く過程で、多くの経営書を読んだ。自分の経験がすべて書いてあることに驚いた。過去が書いてあるなら未来もわかるはず。学びが会社の発展を支えるという経営哲学ができた。社員に博士号を取るように発破をかけ、今では10人が取得した。仕事との掛け持ちは大変だが、希望者が順番待ちをしている」

県立図書館とは移動図書館の広告契約も結んでいる(高知市のオーテピアで)

県立図書館とは移動図書館の広告契約も結んでいる(高知市のオーテピアで)

■「人手不足への対応は経営の危機管理」。高知の中小企業は対応が不十分と指摘する。

「かつて他社より高い給料で従業員を集めようとしたら、大きな反対にあった。横並びでは企業も地方も発展しない。人材が来ないと嘆くのではなく自ら近づく。私や社員は大学などで積極的に講義を担当している。今年、研究所内にフィットネスジムを設置した。若い人材に働きたいと思わせる職場づくりが必要だ」

「中小企業こそ地方に行くべきだ。大阪では試験研究機関などの利用も順番待ちの状態だが、高知ではふんだんに利用できる。大学とも連携しやすい。地方の優位性をもっと生かすべきだ。今後、都会と地方の情報格差は縮まっていく。自然に恵まれて生活しやすく、自分を伸ばせる環境があれば若者は集まってくる」

《一言メモ》県・市が運営、蔵書充実

 「オーテピア」は高知県と高知市が共同で整備し、7月24日に開館した。入館者数はすでに20万人を超えた。1階に録音・点字図書館、5階に科学館が入る。2~4階部分が県立図書館と市民図書館本館を合築し、共同運営する図書館だ。蔵書の収蔵能力は約205万冊で中四国で最大級。高知県内には図書館がない自治体があり、蔵書やサービスが不十分な公立図書館も目立つ。新図書館は蔵書貸し出しや運営アドバイスなどの支援を強化する。
 ヤマキン・ライブラリーがある3階にはビジネス支援デスクがあり、担当司書が資料探しなどを手助けしてくれる。新聞記事など23種類のデータベースを無料で利用できる。ビジネスや地域活性化などのバックアップ充実も期待される。
(高知支局長 高田哲生)
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