介護離職、制度知り防ぐ 実務はプロに 自らは両立準備

2018/10/2 11:00
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「介護離職」に追い込まれる人が増えている。総務省の2017年の就業構造基本調査によると、過去1年間に介護や看護を理由に離職した人は9万9100人。団塊世代が75歳以上になる25年には、離職を検討するビジネスパーソンはさらに増えるかもしれない。介護保険制度やサポートの仕組みを具体的にどう活用すれば仕事と介護を両立させられるのか。必要なノウハウや心構えを探った。

家族の介護が必要となる管理職は多い(横浜市の介護老人保健施設)

家族の介護が必要となる管理職は多い(横浜市の介護老人保健施設)

■基本は介護保険の使い方

「目の前が真っ白になった」。会社員の男性(51)は2年前、母親が1人で住む自宅の庭で転倒し、腰骨を骨折した時をこう振り返る。母親はすぐに入院。退院後も介護が必要だとわかると「パニックになり、どこに相談すればよいのかもわからなかった」。介護離職も頭をよぎったという。

「いつか直面するかもしれない介護。事前の心構えが必要です」。こう話すのはワーク・ライフ・バランスに詳しく、介護離職についての著書もある中央大学ビジネススクールの佐藤博樹教授。身構えろ、という意味ではない。むしろ、介護に関わる際に一番重要なのは「自分が介護しすぎない、という意識」だという。「まずは仕事と介護を両立させるすべを考えるのがよい」と強調する。

では、介護を経験する前に知っておくべきことは何なのか。佐藤教授が最初に指摘するのが、具体的な介護保険の使い方だ。

介護保険は40歳以上の国民が支払う保険料や公費を使い介護費の自己負担分が原則1割となる制度。利用のために最初に必要なのが、サービスを受ける人の症状に応じた「要介護度」を認定してもらうことだ。

認定の相談先は最寄りの「地域包括支援センター」だ。在宅で介護する場合はケアプラン(介護計画)を作るケアマネジャー(介護支援専門員)を自ら探さなければならないが、その相談もできる。電話などで連絡を取り、訪問して打ち合わせをするのが一般的だ。

■介護休業は分割し、両立のために

サービスの前提となる要介護度認定には約1カ月間を要する。それさえも長く感じるという多忙な人には、ケアマネなどと相談をして暫定のケアプランを設定するのがお勧めだ。すぐに介護サービスを受けられるので、両立の体制づくりを素早く進められる。

「介護休業」を取り入れるのも大切だ。勤務先に申し出れば、要介護の家族1人につき通算93日、3回に分けて休める。佐藤教授は「自ら介護をするためではなく、仕事に復帰する仕組みづくりのために設計された休みだ」と指摘し、分割で休むことを提案する。

ケアマネの手配、在宅介護に向けた自宅の改修、施設入居の引っ越し。症状が進めば両立に必要な作業は変わる。その都度休んで自らは両立の準備に専念し、実際の介護はプロに任せるのが効率的というわけだ。

普段から家族や上司と意思疎通をはかることも欠かせない。一般社団法人、介護離職防止対策促進機構の和気美枝代表理事は「親などと介護方針のすりあわせをすべきだ」と話す。

事業者のサービスを受けたがらないケースもある。どのように介護されたいか、他の家族の役割分担はどうするのか、収入はどうなっているか、などテーマは多い。和気氏は「年1回は家族で集まり、考えをまとめておくとよい。要介護者の意思決定の代行は家族にしかできない」と話す。

一方、介護の当事者になった場合、職場への伝え方には注意が必要だ。和気氏は「自分の仕事にどう支障が出て、どうサポートしてほしいかまで具体的に言えればベスト」と助言する。介護の経験がある同僚や友人がいれば話を聞いて、自分のこととして考えておくのもよいだろう。

■「すぐ入居できる」は危険

介護と仕事を両立させるにはプロに任せるのが大事だがどのように任せればよいのか。介護福祉士・社会福祉士で、NPO法人「となりのかいご」の代表理事、川内潤氏に介護サービスの選び方のコツについて聞いた。

――プロに任せる際に、意識することは何でしょうか。

NPO法人「となりのかいご」の川内潤代表理事

NPO法人「となりのかいご」の川内潤代表理事

「家族の介護を『プロジェクト』として捉えるのが重要だ。在宅介護から始める場合、プロジェクトの部長は家族、課長はケアプランを作成するケアマネだ。信頼できるケアマネを探し、家族の介護をマネジメントできる体制をつくる必要がある」

――自らが介護に関わることになった際はどのように相談すればよいですか。

「最初に『地域包括支援センター』にアクセスし、家族がどういった状況にあり、どんな希望があるのか、困っていることは何か、などを念入りに相談すると良いだろう。適切なケアマネを紹介してくれたり、選び方のアドバイスをもらえたりする」

――ケアマネを選ぶ際のコツは。

「ケアマネはそれぞれ得意分野が違う。要介護者の状況を見て、常に半歩先の提案をしてくれるケアマネを選びたい。保有する資格(社会福祉士、理学療法士など)を名刺で確認したり、どういった要介護者を担当してきたか聞いてみたりするといい」

「他にも確認事項がある。ケアマネが所属する居宅介護支援事業所が家から近いか、夜間や休日の対応がどうなっているか。メールが使えないケアマネも多い。緊急時以外はメールでやり取りできるように、最低限のスキルがあるかどうかも確認したい」

――介護施設に入る場合は何に注意すればよいですか。

「まず『すぐに入居できる』とうたう施設に飛びつくのは危険だ。要介護者の状態によってはその施設では十分なケアができない場合もあるためだ。次に昼食の時間帯に家族が見学に行くと良いだろう。最も忙しい時間帯に落ち着いてケアできているかを見ることができるからだ」

「厚生労働省の『介護サービス情報公表システム』を使い、施設の職員の離職率も確認したい。『看取り(みとり)』ケアをしているかどうかも施設の介護への向き合い方を測る基準になる。あとは金額。介護保険の自己負担分なども踏まえた総額を確認するようにしたい」

(高尾泰朗)

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