関西をMICEの都に 日本コンベンション協会代表理事 武内紀子さん
私のかんさい

2018/10/2 11:30
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■インバウンド(訪日外国人)の鍵を握るMICE(マイス)と呼ばれる国際会議や展示会。運営最大手コングレ(大阪市)社長で業界団体、日本コンベンション協会の代表理事の武内紀子さん(55)は年間300件以上の会議を切り盛りする。

たけうち・のりこ 1963年大阪府出身。86年大阪大卒。90年コングレ設立に参加。2013年社長。「IMF・世銀年次総会」(12年)、「伊勢志摩サミット」(16年)などの運営を担当。現在、政府の特定複合観光施設区域整備推進会議の委員。

たけうち・のりこ 1963年大阪府出身。86年大阪大卒。90年コングレ設立に参加。2013年社長。「IMF・世銀年次総会」(12年)、「伊勢志摩サミット」(16年)などの運営を担当。現在、政府の特定複合観光施設区域整備推進会議の委員。

相次ぐ台風が関西の観光にダメージを与えている。今こそMICEを積極的に誘致すべきだと思う。これまでも大震災や外交問題で観光客は減った。そういう時でもMICEの多くは開かれた。各国の要人やオピニオンリーダーが、必要な会議や商談に来る。延期してもキャンセルは少ないのでインバウンドの保険になる。観光とは異なる点だ。

MICEは経済活性化の戦略実現ツールでもある。人と人とをつなげ、戦略を前進させる場になる。7月に京都市で行われた国際薬理学・臨床薬理学会議では田辺三菱製薬塩野義製薬や京大、阪大、理化学研究所などの担当者が一堂に会した。医薬以外でも関西が強みを持つ工学、スポーツ関連の会議が増えている。

決議や宣言に都市名が冠されれば都市ブランド向上につながる。1997年の気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で京都議定書が採択された。関係者が繰り返し引用し、世界のメディアが報じたことで京都ブランドが一層高まった。

■父親は商社マンで転勤族。物心ついた頃から世界の文化の違いに関心を持ち、新聞などの海外関連記事を読むため図書館に通った。

中学・高校の6年間はバスケットボールに励んだ。部活と勉強の合間に夢中になったのが新聞・雑誌から海外の知識を得ること。覚えているのが「インドでは左手が不浄で右手が神聖とされ、右手で食べる」という記事。世界の広さを痛感し、悩みも飛んでいった。

4月、大阪市のコングレコンベンションセンターで「MICEの未来」について講義する武内さん

4月、大阪市のコングレコンベンションセンターで「MICEの未来」について講義する武内さん

大学時代はシドニーにホームステイ。巡礼地のフランス・シャルトルのツアーにも参加した。2回生の時、学術会議のアルバイトをし国際会議運営の仕事を知った。「これだ」と思い、卒業後は迷わず飛び込んだ。海外への好奇心が今も仕事の支えになっている。

■国際会議協会によると、2017年の都市別開催件数は欧州勢やアジア勢が上位を独占。日本は東京が18位で京都50位。大阪は156位と振るわない。

アジアとの誘致競争では競り負けることが多い。韓国やシンガポールは大規模な会議場や展示場をテコに政府主導で誘致する。日本には国際水準の大規模な会議場や展示場が少ない。大阪も中之島の府立国際会議場に大規模展示スペースがなく、南港のインテックス大阪は老朽化している。コングレはJR大阪駅直結のコンベンションセンターを設けたが、今後は周辺の会議場やホールと連携し、梅田全体で誘致するエリアMICEを推進したい。

関西は都市の力が強い分、誘致パワーが分散しやすい。熱意を結集したチーム関西の組織が必要だ。会議のテーマも東京は「日本」を考えがちだが、関西は地方創生を意識してほしい。

■大阪は19年の主要20カ国・地域(G20)首脳会議の開催地。カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致に動き、国際博覧会(万博)にも立候補した。関西全体の活性化にどうつなげるかが課題だ。

大阪だけでなく周辺都市の情報発信が欠かせない。京都、奈良、神戸、大津など各地の歴史、文化、自然の魅力を伝える。大阪に近いことを示し、ドッキングしてアピールするとよい。

学生ボランティアの活用も必要だ。最近の20代は内向きで、パスポート取得率が伸び悩み出国者数も減った。外国人と触れ合えば海外への好奇心も高まる。14年に名古屋市で開催したユネスコ世界会議では約200人の学生を動員した。

サントリーの創業者、鳥井信治郎氏は「やってみなはれ」と社員を鼓舞した。関西には失敗を恐れず、何にでも挑戦する自由な精神が息づいている。いつまでもチャレンジ精神にあふれた地域であってほしい。

(聞き手は大阪社会部 浜部貴司)

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