2018年10月16日(火)

AIで「きれいになる」 スタートアップが挑む

日経産業新聞
コラム(ビジネス)
スタートアップ
2018/10/2 6:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

健康アプリ開発のFiNC Technologies(フィンクテクノロジーズ、東京・千代田)は、資生堂ロート製薬など18社から約55億円の資金を調達した。人工知能(AI)の開発やマーケティング、特許取得、海外展開などにあてる。アプリ開発という業態で、これほど大きな調達規模の大手企業との連携に動く例は珍しい。元トレーナーの溝口勇児社長に今後の事業展開の見通しを聞いた。

溝口勇児社長

溝口勇児社長

――今回の大型調達の狙いは何ですか。

「深層学習や機械学習、運動・栄養・睡眠領域の行動変容のためのAI開発を進める。調達資金はマーケティング費用や人材採用、海外進出にもあてる。使途としてM&A(合併・買収)も視野に入れている」

「知的財産への投資にも力を入れる。ヘルスケアやAIの分野ですでに約20件の特許を取得したが、来年末には100件を取得したい。出願件数はその倍を目指している」

――日本を代表する企業が数多く出資しています。連携を考えていますか。

「成長にはパートナーが必要だ。健康を軸にした弊社の事業に意義を感じて一緒に成長しようという企業が出資してくれた。各社と事業面でも具体的に連携していく」

「例えば、帝人子会社の帝人フロンティア(大阪市)とは睡眠領域でAIを使った製品・サービス開発に取り組む。資生堂とは美容の領域で新規事業の創出を目指す。中部電力とは同社の住環境に関連する事業で連携していく。講談社とは広告事業に関連する事業連携を考えている」

――事業の状況は。

「アプリのダウンロード数は330万を超えた。毎日1万5000~2万件ペースで増えている。昨年12月に始めた有料会員サービスや広告、Eコマースも伸びている。今回の調達はさらに非連続な成長にするための資金にしたい」

スマホを持ち歩くだけで歩数をカウントしてくれる(アプリ画面)

スマホを持ち歩くだけで歩数をカウントしてくれる(アプリ画面)

――社名変更し、役員の体制も変えます。

「社名をフィンクからフィンクテクノロジーズに変え、予防ヘルスケアとテクノロジーの分野で最も強い会社だというメッセージを打ち出す。テクノロジーのプロを意思決定に参加させるため、最高技術責任者(CTO)の南野(充則取締役)に代表権を付ける」

――今後の展開は。

「日本の会社はプラットフォーム上のコンテンツを作るのが得意な会社が多い。しかし弊社は基本ソフト(OS)やプラットフォームになりたい。ヘルスケアに関する様々なコンテンツをそろえ、健康になりたい人やきれいになりたい人がまず『フィンクする』世界をつくっていきたい」

「海外展開も加速する。現在米国に法人を持つが、今後はアジアや北米の数カ国に広げる計画だ。2~3年後に市場で一定のポジションを確保できるよう、スピード感を持って取り組んでいく」

■ ■ ■ 記者の目 ■ ■ ■

今回の大型調達で目を引くのが増資引受先の事業会社の数の多さと業種の幅広さだ。「健康経営」への意識の高まりを背景に、事業連携を考える企業が増えている。事業上のシナジー効果に加え、将来の新規株式公開(IPO)期待もあるだろう。

ただ決算公告を見ると、2017年12月期は売上総損失が4億円強と、粗利益がマイナスの状況。数年間はあえて赤字を続け急成長を狙う「Jカーブ曲線」を目指すのがスタートアップの常とはいえ、アプリを主事業に据える企業としては原価率の高さが目立ち、収益モデルがすでに確立しているとはいえない。

昨年12月から有料会員プランを開始し、広告や電子商取引(Eコマース)を伸ばすなど、今年から本格的に事業の収益化にかじを切っている。今回株主になった大手企業は資金力だけでなく顧客網などのリソースを持ち、事業展開の助けになるだろう。

世界展開など将来に向けて描く絵は大きい。事業の成長モデルを確立できるか、IPOに向けて今後1~2年が正念場となる。  (佐藤史佳)

[日経産業新聞 2018年10月2日付]

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