2018年11月16日(金)

テスラCEOがSECと和解 罰金支払い会長退任

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北米
2018/10/1 0:54
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【シリコンバレー=白石武志】株式非公開化の計画をめぐり、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が米証券取引委員会(SEC)から訴えを起こされていた問題で、両者は29日までに和解した。マスク氏がテスラの会長職から退くことなどで合意した。CEOには留任するもよう。裁判の長期化による経営への打撃を避ける狙いとみられる。

テスラのマスクCEOは裁判の長期化を避けることで経営への打撃を抑える狙い(6月、シカゴ)=AP

訴訟の提起からわずか2日間での「スピード和解」となった。SECが29日にホームページ上で発表した。合意内容によると、マスク氏はテスラの会長職を退き、後任には独立した取締役が就いて経営全般を監督する。マスク氏は今後3年間、テスラの会長職に復帰する資格を失うが、CEOの役職にはとどまるもよう。テスラ側からのコメントは得られていない。

テスラ株を非公開化する計画は、マスク氏が8月7日にツイッターで公表した。投稿でマスク氏は「資金は確保した」としたが、SECは調査を通じて「可能性のある資金源と交渉さえしていなかった」と断定した。誤った情報で投資家を欺いたとして、9月27日にマスク氏が一切の上場企業の経営から退くよう求める訴訟を起こしていた。

SECは29日、テスラの会社としての情報開示の手順などにも問題があったとして、包括的なガバナンス(企業統治)改革を実施することも同社と合意した。テスラは新たに独立した2人の取締役を任命するほか、独立した取締役で構成される委員会を設置し、マスク氏の対外的なコミュニケーションを監督する。

テスラとマスク氏はそれぞれSECに2000万ドル(約22億円)の罰金を払い、裁判所の管理下で被害を受けた投資家に計4000万ドルが配分される。SECによると、マスク氏とテスラはSECの主張を認めることも否定することもなく、和解案に同意したという。

マスク氏は当初、自らに「お目付け役」を置かれることに否定的だったとされる。28日の米国市場でテスラ株が14%下落するなど投資家に動揺が広がったことから、SECの要求を受け入れる判断に傾いたもようだ。

SECと争ったままでは、投資家がテスラへの投資に後ろ向きになる可能性が高かった。マスク氏は和解によって、事業拡大に向けた資金調達に支障が出る事態を回避する狙いとみられる。

テスラの株式非公開化の情報開示をめぐっては司法省も刑事捜査を始めている。損失を被ったとする一部の投資家の間で集団訴訟を起こす動きも広がる。マスク氏とテスラの前には依然として難題が横たわる。

ロケットによる火星移住や、ニューヨークとワシントンを約30分で結ぶ地下高速交通など、マスク氏が掲げるのは壮大な構想が多い。不可能と思える事業に大量の資金を投入し、技術革新のスピードを一変させる手法で、研究予算不足を嘆きがちな科学者やエンジニアらを引き寄せてきた。

ただ最近は舌禍事件などのトラブルが目立っている。突如として株式非公開化を言い出したのも、テスラ株に空売りを仕掛ける投機筋にいらだちを募らせたのが発端だった。マスク氏が上場企業の経営者としてストレス耐性や判断力を失いつつあるとの懸念が強まっていた。

テスラはマスク氏への権限集中が株主総会などでも議論となっており、ガバナンス改革は遅れがちだった。米グーグルが成長期に外部からエリック・シュミット氏をCEOに招くなど、一定のキャリアを持つプロ経営者がスタートアップの創業者を支援する手法は一般的だ。和解を機にマスク氏のカリスマとガバナンスを両立し、成長を継続できるかが問われる。

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