タイ親軍政政党の党首に現工業相 軍政との親密さ浮き彫り

2018/9/29 20:30
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【バンコク=小谷洋司】タイの軍事政権を支持する親軍政政党が29日、首都バンコク近郊で結党集会を開き、軍政のウッタマ工業相を党首に選出した。副党首や幹事長も加えた党の重要ポスト4つを現役閣僚が占め、軍政との親密な関係を浮き彫りにした。2019年2月にも実施される民政復帰の総選挙後、軍政トップのプラユット暫定首相の続投や親軍政権の樹立をめざすとみられる。

国民国家の力党の党首に選ばれたウッタマ氏(左から2人目)ら閣僚4人(29日午後、バンコク近郊)=小高顕撮影

国民国家の力党の党首に選ばれたウッタマ氏(左から2人目)ら閣僚4人(29日午後、バンコク近郊)=小高顕撮影

ウッタマ氏が党首に就いたのは親軍政政党の一つで、軍政に最も近いとみられていた国民国家の力党(パランプラチャーラット党)。副党首にスビット科学技術相、幹事長にソンティラット商業相、報道官にコブサック首相府相を選んだ。4人は閣僚職を続ける。

党首就任後に演説したウッタマ氏は「(国民を二分してきたタクシン元首相派と反対派の)対立を克服し、国を前進させる必要がある」と述べた。集会後には報道陣の質問に応じ、「我々は国民のための党であって軍政を含めて誰のためのものでもない」と主張した。

プラユット氏は24日、報道陣を前に「政治に関心がある」と発言し、総選挙後の再任をめざす考えをほのめかした。元陸軍司令官のプラユット氏が政界入りを決意すれば、国民国家の力党など親軍政政党が続投支援に動くとみられている。

ウッタマ氏ら入党した閣僚4人の顔ぶれから透けて見えるのは、軍政の経済政策を取り仕切るソムキット副首相の影だ。

ウッタマ氏とスビット氏はともに、米イリノイ州の名門ノースウエスタン大学のケロッグ経営大学院の学位を持つ。マーケティングの大家、フィリップ・コトラー教授のまな弟子として知られるソムキット氏も同大学院で博士号を取得した。

国民国家の力党の結党会で党の旗を振る参加者(29日午後、バンコク近郊)=小高顕撮影

国民国家の力党の結党会で党の旗を振る参加者(29日午後、バンコク近郊)=小高顕撮影

コブサック氏は米マサチューセッツ工科大学でマクロ経済の博士号を取得。ソンティラット氏はタイの名門チュラロンコン大学のMBA(経営学修士)を持つ。プラユット氏の続投支持を公言しているソムキット氏に近い経済通の閣僚が、国民国家の力党を引っ張る構図だ。

文民閣僚が先頭に立つ背景には、総選挙をにらみ軍と一体視されるのを避ける狙いがあるとみられる。集会の冒頭、会場の最前列中央には同党から立候補予定という、30歳代とみられる男女がずらりと並んだ。集会の様子を国民に伝えるメディアを意識した計らいであることは明らかだった。

ウッタマ氏は党が推し進める具体的な政策には言及しなかったが、バンコクの南東に高度産業を集積させる「東部経済回廊(EEC)」構想など、自らが旗振り役の一人である経済政策の継承をめざすのは確実だ。経済政策の継続性や安定性を重視する産業界に支持が広がる可能性がある。

報道陣からソムキット氏やプラユット氏が入党する可能性を問われたウッタマ氏は「先のことは分からない」と述べるにとどめた。

タイでは総選挙の前提となる下院議員選挙法が12日、国王の署名を経て公布された。軍政は民選政権を倒した14年5月のクーデター後に禁止していた政治活動の一部を解禁。親軍政政党も結党集会が許された。

現時点では19年2月24日が総選挙実施の有力候補日とされているが、軍政が治安情勢などを口実に再延期する懸念はなおくすぶる。プラユット氏が総選挙より先におこなうと6月に発言した国王の戴冠式の日取りも公表されていない。

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