2019年3月27日(水)

データ覇権争い 動く「日本株式会社」

風見鶏
2018/9/30 1:30
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トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争の陰で米国、欧州、中国の次の覇権争いが始まっている。個人や企業のデータを誰がどう扱うかの話だ。これまでIT(情報技術)の競争で取り残されてきた日本も周回遅れで飛び込もうとしている。

7月中旬、米ワシントンを日本の超党派議員団が訪問した。約20人の上下両院議員と話題になったのは国際的なデータの扱い。団長の甘利明元経済財政・再生相が「日米欧が公正で透明なルールをつくらなければ」と呼び掛けると、米国側から賛同の声が上がった。

甘利氏が今月、支持者に送った国会報告の文書は危機感をあおる。「中国の全国民の一挙手一投足はアリババやテンセントを監督する政府の管理下」「どういうシステムが世界を制覇するかは次の3年で決まる」

締めくくりに「欧州と米国を継ぐのが日本の役割。できるのは安倍晋三首相しかいない」と強調した。

甘利氏は自民党総裁選で首相陣営の事務総長を務めた。側近の甘利氏が、首相の最後の3年の任期のレガシー(政治的遺産)にデータ戦略を掲げる。甘利氏は「首相もルールフォロワーではなくルールメーカーにならないといけない、と認識している」と話す。

政府・与党が慌て始めたのはここ半年ほどのことだ。データをめぐる世界の急変が背景にある。IT業界は長くGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)と呼ばれる米巨大企業が圧倒していた。

これに5月、欧州が待ったをかけた。一般データ保護規則(GDPR)を施行し、個人データ保護を大幅に強化した。欧州ではデータを扱う主体は企業から個人に移る。

外交当局や経済官庁の幹部は「米欧がいがみ合えば日本は大変なことになる」と警戒する。データが事実上、国家管理になる中国の脅威だ。監視カメラの画像や購買記録、信用情報などは最終的に政府に集まる。欧米がぶつかり続ければ、中国の国家主導方式が世界を制しかねない。

日中友好に関わる団体の関係者は昨年来、与党議員や経済官庁、経済界に「中国のネット関連企業に、メガバンクが持つ日本人の口座をひも付けさせては危険だ。情報は全て抜かれる」と説いて回った。

目先のビジネスでいったんデータの流出を許せば流れは変えられなくなると訴える。

平成の30年間、日本はITで「ウィンテル」、GAFAという米の企業に押されてきた。昭和の旧通商産業省が進めた政官業一体の政策もITではほとんどなかった。だが中国の国家主導を前に経済界も変わる。

経団連は最近、政府の情報政策を一元化する「デジタル省」の創設を提言した。政府内で担当が内閣府、内閣官房、経済産業省、総務省などに分かれ、司令塔がいないためだ。提言には「官民一体で取り組む」との趣旨も記した。

自民党では平井卓也IT戦略特命委員長も甘利氏と連携する。今年、フィンテックなどの議連を率いる根本匠氏は欧州、政府の未来投資会議を担当する越智隆雄内閣府副大臣はエストニアをそれぞれ訪ね、データ戦略を探った。

政権が水面下で検討しているのは欧米を橋渡しし、中国のデータ覇権を防ぐ経済外交だ。来年、日米欧と新興国による20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国は日本。

グローバル化とデジタル化が加速する世界で、外交の最前線も動く。従来型の経済や力関係だけでははかれない時代になった。(政治部次長 佐藤理)

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