2019年4月23日(火)

メルケル氏に独与党が反旗 首相の側近、再選されず

2018/9/26 17:57
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【ベルリン=石川潤】ドイツのメルケル首相に対して、与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が事実上の不信任を突き付けた。首相の右腕で連邦議会の会派を率いる院内総務を13年間務めてきたカウダー氏が再選されず、ほぼ無名のブリンクハウス氏が25日、選出された。政権の迷走が続く首相の求心力は低下しており「メルケル降ろし」が広がりかねない状況だ。

「これが民主主義だ。敗北することもある」。メルケル氏は25日、こわばった表情で敗北を認めた。院内総務を決める投票の結果はカウダー氏が112票、ブリンクハウス氏が125票。事前予想ではメルケル氏の支援を受けるカウダー氏が圧倒的に有利といわれていたが、秘密投票ということもあって政権への批判票がブリンクハウス氏に流れ込んだ。

疑い深く、親しい政治家がほとんどいないメルケル氏にとって、カウダー氏は数少ない盟友のひとり。議員団トップを失い「罰せられたのはカウダー氏ではなくメルケル氏」(公共放送ARD)との受け止めが広がった。連立与党を組むドイツ社会民主党(SPD)の幹部、連邦議会副議長のオッペルマン氏は「これはメルケル氏への反乱だ」と指摘する。

伏線はあった。8月末にドイツ東部で起きた極右の暴動について、情報機関トップ、連邦憲法擁護庁長官のマーセン氏が極右寄りともとれる発言をして批判を浴びた。更迭を求めるSPDのナーレス党首と、擁護するCSU党首のゼーホーファー内相が政権内で対立するなか、メルケル氏は「情報機関トップの職は解くが、内務次官に昇格させる」という双方の顔を立てる案をまとめた。

ところが問題発言をしながら昇格するという不可解な案に世論は反発。メルケル氏は24日「とても後悔している」と謝罪に追い込まれた。

メルケル氏は2017年9月の連邦議会選挙で議席を大幅に減らし、18年3月に連立相手のSPDに財務相ポストを譲った。7月には「移民を国境で追い返す」と主張するゼーホーファー内相と激しく対立。内輪もめで政権運営が滞るなか、与党の支持率はじりじりと低下し、党内で危機感が高まっていた。

調査機関のインフラテスト・ディマップによると、メルケル氏とゼーホーファー氏が率いるCDU・CSUの支持率は21日時点で28%にとどまる。1年前の連邦議会選挙の得票率より約5ポイント下がった。連立パートナーのSPDも3ポイント以上低い17%まで下がり、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が初めて支持率2位に浮上した。

今後の焦点は、与党内で「メルケル降ろし」がどう広がるかだ。ブリンクハウス氏はとりあえず政権運営に協力する姿勢を示しており、倒閣の動きが直ちに勢いづくかは不透明。CDUのクランプカレンバウアー幹事長やシュパーン保健相らがメルケル氏の後任候補だが、経験不足で決め手に欠くとの指摘もある。

カギになるのが10月のバイエルン州の州議会選挙だ。同州を地盤とするCSUの苦戦が予想されており、結果次第ではゼーホーファー党首の進退問題につながる。敗北なら政局の混乱は避けられず、刷新を求める声がCDU・CSU全体に広がれば、政権基盤が揺らぐメルケル氏の退任を求める声が高まりかねない。

「メルケル政権の終わりへのさらなる一歩だ。いま想像しているよりもずっと早く終わりはやってくる」(AfDのガウラント党首)。政権の迷走にほくそ笑んでいるのは極右勢力だ。既存政治への失望を利用して支持を広げてきたポピュリズム(大衆迎合主義)がさらに勢いづきかねない状況といえる。

極右の台頭を抑えてドイツの政治を再び安定させる力がメルケル氏に残されているのか。この問いへの答えがカウダー氏のまさかの落選だとすれば、メルケル氏が残り3年の任期をまっとうできるかは極めて不透明だ。

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