2019年7月23日(火)

海外で高い知名度 神戸牛の評判、維新に開花(もっと関西)
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コラム(地域)
2018/9/27 11:30
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お金をためては海外に行く旅行好きの記者。旅先で出会った日本びいきの外国人に「日本に行ったら何を食べてみたい?」と聞くと、すしや天ぷらではなく「神戸ビーフ」と即答され、面食らった。聞くと神戸ビーフ、いわゆる神戸牛は最高級品として世界的に有名らしい。他にも松阪牛など有名ブランドが日本にあるが「知らない」という。なぜ神戸牛は有名なのか。

東京・浅草の雷門前で訪日外国人20人を対象に神戸牛を知っているか、実際に聞き取り調査した。このうち13人が「知っている」、「聞いたことがある」と答えた。

スイス人のパトリックさん(29)は「母国のテレビで神戸牛が取り上げられていた。レストランもたくさんあり、スイスでも有名だ」と笑う。神戸牛を食べるため、滞在中わざわざ関西圏に足を運ぶ人も少なくない。スウェーデン人のアンジェリカさん(34)は京都滞在中にステーキを食べたという。「スウェーデンの牛肉とは違ってやわらかく、おいしい」と話す。

一方、知名度が低かったのが近江牛や松阪牛だ。国内では同じ高級ブランドとして人気だが、「知っている」と答えたのは、いずれも2人にとどまった。

農水省が2015年に海外で実施したブランド和牛の認知度アンケートでも、同様の傾向だ。米国では神戸牛の認知度は3割だが、松阪牛や近江牛、米沢牛は1割以下にとどまる。アジアでも神戸牛の認知度はタイで89%、香港で78%、台湾で75%にそれぞれ達した。ほかの産地がおおむね5割以下にとどまるのとは対照的だ。

さしとよばれる脂肪分がきれいに広がった神戸牛は店頭でも高値

さしとよばれる脂肪分がきれいに広がった神戸牛は店頭でも高値

どうして神戸牛は知名度が海外で高いのか。背景について、神戸肉流通推進協議会(神戸市)の谷元哲則事務局長に聞くと、「明治維新のとき、神戸港から出荷された牛肉を国内に住む外国人貿易商が『神戸牛』と言い始めたのがはじまりだ」と説明された。

明治維新の開国で、日本に住む外国人が増え始めたが、問題となったのが食べ物だ。当時の日本は魚や野菜を中心とした食文化で、外国人が求める食用の牛肉は乏しかった。そこで代替品として提供されたのが、関西地方で飼育されていた耕作用の牛だ。当時、関東では田や畑を耕すのに主に馬が使われていたのに対し、関西では牛が使われていたからだ。

耕作用牛は兵庫県北部の但馬地方のほか、近江牛の滋賀県など関西各地から集められ、神戸港から出荷。横浜など全国の外国人居住区で販売された。神戸港から出荷された牛をまとめて神戸牛と呼んで「現在と定義が違う可能性がある」(谷元さん)が、神戸港を経由した牛は脂がのり、外国人の間で評判が広まった。その後、肉食文化は日本人の間でも次第に普及し、神戸牛ブランドが確立されていったという。

国内ブランド牛のうち、明治の開国と同時に神戸牛ほど外国人の間で知れ渡ったものは少ない。神戸牛の海外での高い知名度は、長い伝統が関係しそうだ。神戸牛は現在は兵庫県内の指定農家で生まれた但馬牛のうち、霜降りの度合いなど一定の条件を満たすものだけが認められる。

神戸牛の輸出は12年にマカオ向けで始まったのを皮切りに、年々拡大している。神戸牛を提供する海外の認定レストランの数も直近では97店と国内(115店)の規模に迫る。訪日外国人の増加も人気に拍車をかける。神戸市内の神戸牛レストランの客の大半は訪日客だ。関西国際空港の閉鎖で訪日客が少なくなった時期には「売上高が4割減った」という声も聞かれた。

人気が拡大する一方、課題は飼育農家の高齢化で生産が追いつかない点だ。17年の神戸牛の枝肉の平均価格は5年前から5割も値上がりした。

最近では高値に便乗し、他の産地の牛肉を「神戸牛」と称して販売する悪質な飲食店も一部であるという。神戸牛を楽しむためはるばる海外から関西にやって来る外国人が万が一、ニセモノ被害にあったらどう思うか。同じ海外旅行好きの立場として、心境をついおもんぱかってしまった。

(大阪経済部 渡辺夏奈)

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