2018年11月15日(木)

富士フイルムのゼロックス買収 継続か断念かヤマ場迫る

エレクトロニクス
法務・ガバナンス
2018/9/26 11:50
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富士フイルムホールディングスによる米事務機器大手ゼロックス買収問題がヤマ場を迎えつつある。米ニューヨーク州の裁判所は米国時間25日、買収差し止め仮処分を不服として富士フイルムが提起した上訴審で初の審問を開いた。富士フイルムは敗訴すれば白紙撤回の検討も迫られる。

富士フイルムホールディングスの古森重隆会長

25日午後3時半、予定開始時間より遅れて控訴裁判所で審問が始まった。裁判官が「買収に応じれば(5月に退任した)ジェイコブソン氏の最高経営責任者(CEO)としての地位を保証するという取り決めがあったのか」と質問すると、富士フイルム側の弁護士が「そんな取り決めは無い」と否定した。

審問は両者の代理人が買収に至った経緯などを説明し、4人の裁判官が質問する形で進んだ。質疑は富士フイルムの買収提案を受け入れたゼロックス取締役会の決定の経緯に集中した。30分ほどで終わり、判決や今後の裁判日程は示されなかった。

富士フイルムは1月末にゼロックス買収を発表したが、ゼロックス大株主のカール・アイカーン氏が反発。同じく大株主のダーウィン・ディーソン氏は2月に差し止めを求めて訴訟を起こした。米裁判所は4月27日、ディーソン氏の主張を認めて差し止めの判決を下した。裁判所が買収の手続きを禁止したため、計画は膠着状態に陥った。

裁判所は一審でディーソン氏の主張を全面的に認めた。判決文はゼロックス前CEOのジェフ・ジェイコブソン氏と富士フイルム担当者との親密さを示すメールのやり取りを引用して交渉の経緯を問題視。ジェイコブソン氏がCEOとしての立場を守るために買収を進めたと認定した。

差し止め判決は富士フイルムにとって想定外だった。富士フイルムは判決を不服として5月に上訴した。米国の上訴審は一審で認定した証拠を引き継ぐため、法的な解釈や判断が判決の焦点になる。富士フイルムはゼロックス取締役会が全会一致で決議したことなどを根拠に買収案の正当性を訴えていく。

富士フイルムの主張が認められて差し止めが解除されても、即座に買収案が実現するわけではない。買収契約を結んだゼロックス前経営陣は5月に退任し、同社は買収契約を一方的に破棄した。買収が実現するためには、ゼロックス経営陣が契約を解消した経営判断を覆す必要がある。

富士フイルムは上訴審の結果次第で次の対応を決める方針だ。同社が勝訴すれば当初の買収案を含めてゼロックスと交渉できる。富士フイルムの古森重隆会長は「(差し止めが解除されれば)統合案の利点を説明し、説得する」としている。もっともゼロックスが応じるかは不透明だ。

富士フイルムが上訴審で敗訴すると、最高裁に上告するか条件を変えて再交渉するかの選択肢がある。裁判にかかる時間は現時点で不透明だが、上告すれば長期戦略が定まらない状態が長引くのは必至だ。古森会長は6月に日本メディアの取材に対し、年内をめどに判断する考えを示した。一方で上告せずに再交渉すれば、富士フイルムの譲歩は避けられない。

富士フイルムはディーソン氏が起こした差し止めの裁判と並行してゼロックスを相手取り損害賠償請求を進めている。上訴審の結果にかかわらず、ゼロックスとの交渉で落としどころを見いだせなければ、買収を断念して損害賠償を求める訴訟に絞らざるを得ない。

富士フイルム子会社の富士ゼロックスはゼロックスと営業地域のすみ分けを含む技術契約を結ぶ。ゼロックスはこの契約を更新しない方針を表明している。市場自体が伸び悩む中、買収計画に対する反発が既存の提携関係を崩しかねない事態を招いた。富士フイルムはゼロックス経営陣と半世紀以上続く両社の関係性そのものを話し合う必要に迫られている。

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