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離婚したら養育費は? 子が成人するまで払うのが原則

財産分与、当面の生活費を十分確保

写真はイメージ=PIXTA

秋の夜長の筧家のダイニングテーブル。夕飯を食べ終えた良男と幸子がテレビを見ながら談笑していると、仕事後に職場の同僚と食事に出かけていた恵が帰宅しました。ため息交じりにソファにバッグを置くなど、ずいぶん浮かない様子です。

筧幸子 何かあったの?

筧恵 先輩夫婦が離婚することになったんだって。まだ小さな子どもも1人いるのに……。

幸子 それは残念ね。子どもが大きくなれば、教育費などどんどんお金がかかるようになるわ。お子さんのためにも、夫婦で養育費や今後必要なお金の話し合いだけはしっかりしておいてほしいわね。

筧良男 養育費ってよく聞くけど、実際はどう決まるの?

幸子 養育費は離婚した元夫婦の間で、子どもを養うのに必要なお金をやりとりするもので、金額は父母で話し合って決めるんだけど、目安がないと決めようがないという人のために裁判官が算定表を作ったの。養育費を払う人ともらう人の年収や、子どもの人数などに応じた目安が示されているわ。東京や大阪の家庭裁判所では参考資料として活用されているのよ。

 いくらくらいなの?

幸子 の先輩夫婦は2人とも会社員で子どもが1人なのよね? 子どもが0~14歳の場合、養育費を払う側の年収が600万円で、もらう側が500万円なら月額2万~4万円。払う側が1000万円で、もらう側が500万円だったら6万~8万円、同じくもらう側が200万円程度なら8万~10万円が目安となるわ。これらはあくまでも目安にすぎないの。厚生労働省の2016年度調査によると、養育費をもらっていたり過去にもらったりした世帯の平均額は、子1人の母子世帯で月約3万8000円、父子世帯で約2万9000円よ。

 案外少ないのね……。

幸子 ファイナンシャルプランナーの豊田真弓さんも「算定表の額も平均額も、教育や養育にかかる実際の費用に比べると少ないと言わざるを得ない。離婚が決まったら今後、何にいくらかかるのか、長期的な視点でしっかり計画を立ててから養育費の話し合いに進みたい」と話しているわ。ただ毎月払うことが負担になるような額では途中で払えなくなってしまう恐れもあるの。重要なのはずっと払い続けられる妥当な金額で折り合いをつけることね。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 筧良男(かけい・よしお、52=中)  筧恵(かけい・めぐみ、25) 

良男 養育費は子どもが何歳までもらえるものだろう?

幸子 養育費は民法で「監護費用」と定義されているの。父母間で監護費用を払う規定で、原則、親に親権がある期間、つまり子が未成年である20歳になるまでが支払期間となるわ。

 それだと大学に進学したら卒業前に養育費の支払いが終わってしまうわ。

幸子 実際には20歳以降も養育費をもらえている例はたくさんあるわ。養育費を22歳の3月までとする裁判例もあるの。あるいは20歳からは子から請求する「扶養料」と呼ぶ費用として受け取れるの。弁護士の榊原富士子さんは「養育費の取り決めは金額も支払期間も父母の合意内容が大切。子を最大限応援する気持ちでどんな学歴を望むかなどを相談して決めてほしい」と助言しているわ。成人年齢は22年4月から18歳に引き下がることが決まったけれど、監護費用の期限がどうなるかは今後の裁判例次第だそうよ。

良男 養育費を払わない人も多いと聞くな。

幸子 残念ながらそういうケースは多いわ。厚労省の16年度調査では、養育費を受け取っているのは母子世帯で24.3%、父子世帯では3.2%にすぎないの。最初は払っていても途絶えてしまうことも多いそうよ。経済的な事情はもちろん、再婚などの環境変化も多いわ。

良男 ちゃんと受け取るためにはどうしたらいいんだ?

幸子 まずは養育費など取り決めたことを公正証書や調停証書など文書にして残すことね。榊原さんは「少し時間や手間はかかるが、話し合いで離婚できるケースでも家裁に調停を申し立てて調停証書を作成したほうがいい」と話しているの。調停証書があれば、養育費が途絶えた場合に家裁から支払うよう勧告してもらえるからよ。

 夫婦でためた預金はどうなるの?

幸子 財産分与では婚姻期間中に得た資産は共有財産としてすべて二分割するの。持ち家や学資保険などの貯蓄性保険も含むわ。持ち家の自宅を売却せず、どちらかが住み続ける場合、ローンの返済や名義などはどうするのか、精査しないといけないわね。結婚前の預貯金などは全額本人のものになるわ。

良男 注意点は?

幸子 財産分与で注意したいのは当面の生活費をちゃんと確保すること。豊田さんは「財産分与を学資保険などで受け取った場合、手元に残る預貯金が少なくなってしまう恐れもある。当面の生活に必要な資金を十分に確保できるよう話し合ってほしい」と強調しているわ。

 離婚前にお金のことや子どもの将来について、しっかり話し合うことが必要なのね。

幸子 その通り。住まいや仕事、お金、子どもの環境など無計画に離婚してしまったら後々、生活が破綻してしまう恐れもあるわ。離婚は人生の重大局面。子どもと自分がどう暮らしていくか、あくまで冷静に長期的な生活設計を立てたうえで備えるのが大切よ。

親子交流あれば費用相談も


弁護士 榊原富士子さん
 離婚の前後は感情的になりがちですが、離婚は子どものその後の人生に多大な影響を与えます。冷静に父母で子どもの将来を話し合う必要があります。養育費が途絶えて給与の差し押さえをせざるを得ない場合もありますが、そうならないよう子どもと離れて暮らす親との交流をできるだけ続けることも大切です。
 ずっと子どもに会わないまま、養育費を負担し続けるのは容易ではありません。交流があれば、想定外の進路に進むとしても応援して追加費用を出してくれるかもしれません。払う側が再婚や経済的な事情で養育費が負担になっても、支払いが途絶える前に減額などの相談もしやすいでしょう。一度は家族だった相手。子どもが自立するまで互いに協力し合う関係を築きたいものです。
(聞き手は岡田真知子)
[日本経済新聞夕刊2018年9月26日付]

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