北海道への修学旅行、直前キャンセル相次ぐ

2018/9/25 11:01
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北海道で震度7を観測した地震を受け、修学旅行のキャンセルが相次いでいる。道内のライフラインや交通網はほぼ復旧したが、余震などへの不安を拭えずに学校側としては苦渋の選択。秋のかき入れ時に地元の観光業界の損失は大きい。道や観光関係者は「受け入れに支障はない」「来てもらうのが一番の復興支援」と訴えている。

北海道地震による修学旅行の行程・日程変更を伝える高校のホームページ(19日)

「観光客が減り、経済的にも厳しい北海道を応援したい気持ちはあったのだが……」。9月中旬、石川県立七尾高校(同県七尾市)の大島尚文校長は申し訳なさそうに話した。9月末から2年生約200人が札幌や小樽を訪れる予定だったが、行き先を急きょ九州に変更した。

教員は地震直後から旅行会社と連携し現地の情報収集を進めたが、「余震が続くとの情報があり」(大島校長)、苦渋の選択を迫られた。生徒は7月から北海道の歴史を学び、自主行動の計画を立てるなど準備を重ねてきた。変更が決まり、旅行会社が九州の宿泊先を手配するなど対応を急いでいるという。

吉備高原学園高校(岡山県吉備中央町)は2年生約100人が9月23日から4泊5日で札幌や函館を訪れる予定だったが方針転換。11月に期間を短縮して東京周辺を旅行する。「保護者の不安を拭えないと思った」と陣内清春副校長。予定通りの出発を望む生徒もいたが「北海道は大変な時期。復興の邪魔になるのでは」と心配する声もあったという。

「保護者を安心させるために『修学旅行の行き先は安全だ』と公的な書面を出してほしい」。北海道観光振興機構(札幌市)には道外の学校関係者や旅行会社から要望が相次ぐ。秋の観光シーズンを迎えた北海道は人気の修学旅行先で例年は月100校を超す学校が道外から訪れる。だが、今秋は予定していた学校の8割近くが中止か延期を決めた。

広報担当の長野博樹さん(47)は「『北海道全体で余震や道路の寸断が続いている』との誤解がある」とため息。修学旅行は1年半~2年前から段取りを進めており「農業体験など秋ならではの教育旅行を楽しんでもらおうと誘致に力を入れてきた。経済的にも大きな打撃だ」とこぼす。

ホテルノルド小樽(小樽市)では9~10月に予約があった4校中3校の約200人分がキャンセル。受付の女性は「インバウンドも激減し、秋のかき入れ時に空室が増えて残念。保護者の気持ちを考えると仕方ないが」と声を落とした。

9~10月に中高6校の計約500人分のキャンセルがあった野外博物館「北海道開拓の村」(札幌市)営業担当の松井則彰さん(42)は「予約のある学校には安全だと伝えているが理解が得られない。観光に来てもらうのが一番の復興支援」と訴える。

こうしたなか、北海道の高橋はるみ知事は18日、道庁ホームページで「大部分の地域では観光客の受け入れに全く支障がない」とのコメントを発表し"安全宣言"。「北海道は鮮やかな紅葉が野山を覆い、実りの秋を迎える。道民と親しく交流していただくことを願っている」と観光を促した。

道庁観光局は「北海道は大部分が通常の生活に戻っている。将来を担う若い世代に道の魅力を知ってほしい」と呼びかけている。

地震や火山噴火 修学旅行者数、回復に時間

地震などの自然災害に遭った地域では、修学旅行生の訪問が回復するのに時間がかかるケースが多い。

2011年3月の東日本大震災で被災した福島県は、16年度の修学旅行や林間学校など教育旅行の宿泊者数が43万5千人だった。震災前の09年度(約71万人)と比べるとなお6割程度にとどまっている。

福島県観光交流課の担当者は「原発の風評被害などは根強い。修学旅行の行き先は数年前に決まる場合が多く、今後も粘り強くアピールして回復につなげたい」と話す。

16年4月に最大震度7を観測した熊本県では、16年度の教育旅行の宿泊者は前年度の約3割、約3万4千人だった。特に阿蘇地域では、16年10月に阿蘇山が噴火した影響もあり前年度の約5%にまで落ち込んだ。

熊本県観光物産課の担当者は「保護者に余震への不安が大きかったようで、18年度もまだ回復にはほど遠い。地震対策を学ぶプログラムなどを作った結果、各校からの問い合わせは徐々に増えている」と話す。

災害発生前の水準にまで回復した自治体もある。宮城県は16年度、震災前の09年度を約2千人上回る約15万人が訪れた。県観光課は「沿岸部を見たり、被災者の話を聞いたりする震災学習を各地の学校へアピールしてきた努力が実った」としている。

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