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プレーオフ進出 ヤンキース田中に「勝負の季節」

スポーツライター 杉浦大介

米大リーグのヤンキースは22日(日本時間23日)、ワイルドカードでのプレーオフ進出を決めた。オールスター戦以降、好調を維持してきた田中将大にとっても「勝負の季節」が迫っている。昨季のプレーオフも大活躍した田中は、2009年以来のワールドシリーズ制覇を目指すチームにどんな形で貢献するのか。10月3日に行われる一発勝負のワイルドカード戦に先発として起用されるのか。

9月20日のレッドソックス戦は、田中が久々に痛打されたゲームだった。直近の11試合のうち9試合で自責点2以下と安定感抜群だったが、この日は大リーグでナンバーワンの得点力を誇るレッドソックスに被安打8で5失点。勝負球が甘く入るシーンが目立ち、今季最短の4回0/3でマウンドを降りた。

3年連続ア・リーグ東地区優勝までマジック2で迎えたレッドソックスは、田中降板後にリリーフ投手も打ち崩し、11-6で2位のヤンキースに勝利。ヤンキースは本拠地ヤンキースタジアムで相手の地区優勝決定を目の当たりにするという悔しさを味わったのだった。

「レギュラーシーズンもまだ最後のカードがあり、ワイルドカード戦で勝てばその次のところで当たる。やり返すチャンスはある。悔しい(思いの)ままではもちろん終れないので、やり返したい」

後半戦、抜群の安定感

試合後の本人の言葉通り、今季の田中はレッドソックス戦では19回を投げて16失点と苦しんできた。"世界一"を狙うには同地区のライバルは乗り越えなければならない相手だけに、余計に悔しい思いはあったはずだ。

もっとも、この試合を別にすれば、今季後半戦の田中が素晴らしい投球を続けてきたことに誰も異論はあるまい。オールスター戦以降の11度の先発機会で防御率2.62。7月15~8月5日まで21回1/3、9月1~14日まで20回と2度の長い無失点記録も継続した。7月15日に故障から復帰して以降、大リーグに移籍して5年連続で12勝以上を挙げてきた安定感は際立っている。10月からスタートするポストシーズンでも、ヤンキース投手陣の中で田中が重要な役割を担うことは間違いない。

レッドソックスが地区優勝を遂げたのに続き、ヤンキースも9月22日のオリオールズ戦に勝利し、ワイルドカードでのプレーオフ進出を決めた。10月3日のワイルドカード戦では、1.5ゲーム差(22日現在)でヤンキースを追うアスレチックスとの対戦が濃厚。ニューヨークかオークランドのいずれかで敗れた方がシーズン終了という大一番をプレーすることになる。

ニューヨークでは現在、この一発勝負のサバイバル戦に誰が先発するかが話題になっている。有力候補に挙がっているのはルイス・セベリーノ、JA・ハップ、田中の3人だ。

・セベリーノ 18勝8敗 防御率3.38
・ハップ   6勝0敗 防御率2.39
       (ブルージェイズ時代と合わせて16勝6敗 防御率3.62)
・田中    12勝5敗 防御率3.67

「難しい決断になるが、私たちに多くの質の高い選択肢があるのはいいことだ。みんないいピッチングを続けてくれているから、誰を選ぶことになっても、私たちは好位置にいられる」

アーロン・ブーン監督はそう語り、シーズン終了までに様々な要素を考慮して決断すると繰り返している。

先発陣、三者三様の持ち味

24歳のセベリーノは今季前半戦では14勝2敗、防御率2.31と見事な成績でオールスター戦に選ばれ、「ヤンキースのエース」に最も近い存在と考えられている。7月26日にブルージェイズから獲得した35歳のベテラン左腕ハップは、数字が示す通り移籍以降は絶好調。そして、田中が夏場以降に好投を続けているのはこれまで述べてきた通りだ。

この3人の中で、田中を推す声は少なくない。今季後半戦で好調なだけでなく、昨年のポストシーズンでインディアンス、ワールドシリーズを制したアストロズという強豪を3試合で防御率0.90とほぼ完璧に抑え込んだ実績がある。また、アストロズ相手に5回2失点で敗戦投手になりはしたが、15年にも緊張感あふれるワイルドカード戦で先発した経験があるのもプラス材料だ。

「シーズンを左右する1試合(の先発投手)に選ばれるのは光栄。そういうゲームに投げたいと投手はみんな思うだろうし、普通のこと。だからといって、選ばれるために頑張ろうという気持ちはない」

14日のブルージェイズ戦後には田中本人もそう述べていたが、全米の視線が注がれる大舞台は望むところなはずだ。20日のレッドソックス戦での乱調は残念ではあったが、その試合後、ブーン監督もこの1試合が選考に大きく影響することはないと明言していた。

「私たちは特に大舞台でのマサには大きな自信を持っている。多くの選択肢があり、マサもその中に含まれる。この試合結果から、彼がワイルドカード戦での重大な場面で結果を出せないとは考えない」

これまでの大舞台での活躍から、田中はチームで一番の「ビッグゲーム・ピッチャー」とみなされているようだ。セベリーノが今季後半は防御率5.74と大きく調子を落としたこともあり、田中が再びヤンキースを背負って先発マウンドに立ってもチームメート、ファンは納得するだろう。

もっとも、「田中で決まり」とみられているわけでもない。対抗馬の一人と目されるハップの移籍後の成績は田中以上。アスレチックス戦ではこれまで通算11試合で4勝1敗、防御率3.47というデータもあり、16年のプレーオフでも2試合に投げて防御率2.70だったベテラン左腕の安定感は捨てがたい。

ブーン監督「難しい選択」

判断を難しくさせるのは、ハップは勝ち進めば地区シリーズで対戦するレッドソックス戦でもこれまで通算20試合に投げて防御率2.82、今季は3試合に登板して同0.54と圧倒的に相手打線を抑えていることだ。あくまで目標をワールドシリーズ制覇に置くのであれば、ワイルドカード戦の先発は他の投手に任せ、ハップはレッドソックスと対戦する地区シリーズの第1戦で起用すべきだという意見もわからなくはない。

ただ、ワイルドカード戦で敗れればシーズンは終わるのだから、やはり「温存」を考えるべきではない。田中がシーズン最終週に調子を落とすようなことがあれば、一発勝負のマウンドがハップに託される可能性は高まるのだろう。

また、大リーグのある強豪チームのスカウトのこんな意見も無視はできない。

「ワイルドカード戦がホーム開催だったら、依然としてセベリーノを投げさせるべきだと考える。セベリーノはホームとアウェーでは大きく成績が変わり、地元開催なら依然として優位な投球ができる。アウェーであれば田中かハップ。好調時にエースレベルの投球をすることを考えれば、やはり田中だろう」

後半戦では不調だったセベリーノだが、確かにヤンキースタジアムでは防御率2.74、92回を投げて110奪三振と優れた投球を続けてきた。アスレチックス戦に限れば、9月5日(オークランド)は2回2/3で5失点と乱れたが、5月13日(ニューヨーク)では6回1失点。好調時には相手を完璧に抑えられるのがこの速球派右腕の魅力である。ニューヨークでは地元ファンの歓声で勇気づけられている部分もあるのかもしれない。ヤンキースがこのままワイルドカード戦をホームで戦う権利を得れば、セベリーノの登板もまだ考えられそうだ。

このように3人の投手たちにそれぞれ一長一短があるだけに、ブーン監督が「難しい選択」という言葉を何度も口にしているのはうなずける。文字通りチームを背負って立つマウンドに田中が上がる可能性は依然として低くないが、予断は許さない。田中の次回登板はまだ発表されていないが、9月24日からタンパで行われるレイズとの4連戦のいずれかで投げる可能性が高い。すでにプレーオフ進出を決めた後でもセベリーノ、ハップと同様、最後の1週間の投球内容に今後のプランが委ねられそうな気配だ。

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