2018年10月20日(土)

ルネサス、知財で稼ぐ 半導体の設計情報外販

エレクトロニクス
2018/9/21 19:40
保存
共有
印刷
その他

ルネサスエレクトロニクスは知的財産の外販に乗り出す。半導体の基本的な設計情報を、半導体を内製する電子部品メーカーや同業他社などに提供する。半導体産業では設計や製造といった特定プロセスを専業とする企業が台頭し、分業が進む。ルネサスは全工程を自社で手掛けてきたが、製造部門に依存しない設計特化型の事業にも参入して収益源を広げる。

半導体業界は開発と製造の分業が進む(ルネサスの工場)

半導体業界は開発と製造の分業が進む(ルネサスの工場)

ルネサスが手掛ける数百種類の半導体のうち、まず40種類の設計情報をライセンス販売する。家電や自動車などで頭脳の役割をするプロセッサーや、データを記録するメモリーなどだ。提供先は半導体メーカーのほか、自社製品に組み込む半導体を内製する電子部品メーカーなどを想定する。

基本的な設計情報のライセンス事業で強い存在感を持つのが、ソフトバンクグループが3兆円超で買収した英アーム・ホールディングスだ。プロセッサーに特化しており、スマートフォン(スマホ)用では世界シェアの9割を握る。

ルネサスはプロセッサー以外にも多様な種類の半導体を手掛けるのを強みとして差異化する。料金面でも特徴を出す。アームなど先行企業では初期費用をとるのが一般的だが、ルネサスは顧客の製品販売量に応じた従量課金のみのプランも用意する。まず2025年に100億円以上の売り上げを目指す。

ルネサスは17年2月の米インターシル買収に続き、18年9月には米インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)の買収を発表した。いずれも設計・開発に強みを持つ。買収企業が持つ技術も外販の検討対象にする。

自社製品の競争力が低下する恐れもあるが「外販で得られる商機の方が大きい」(ルネサス)と判断した。顧客企業が新製品を開発すればルネサスにとっては手持ち技術の用途拡大につながる。設備投資をして自社製品を増産するのに比べると知財の外販にかかるコストは少ないので高い収益性も期待できる。

半導体産業は設計から製造までを1社で手掛ける垂直統合型の事業形態が一般的だった。インテルが典型例だ。回路が複雑になるにつれ設計開発に特化した米クアルコムや米エヌビディアなどが台頭。TSMC(台湾積体電路製造)など製造の専業企業も存在感を高めてきた。知識集約型の設計開発と資本集約型の製造では事業の性格が異なるため、分業により効率を上げるという発想だ。

設計開発をさらに細かく分けたのがアームだ。ベースとなる基本設計だけを手掛ける。スマホ向けのプロセッサーなどを得意とするクアルコムなどに提供している。

個別の機能を持つ半導体だけでは自動車や電子機器の動作に十分なシステムを作れない。各機能を1つのチップに組み合わせる必要がある。例えばプロセッサーに強みを持つ企業はメモリーや通信半導体の技術をルネサスなど外部から調達すれば、自らは得意分野に集中できる。製品の開発期間も短くなる。

人工知能(AI)や自動運転といった特定分野の半導体を自社開発する電子部品メーカーが増えているのも、分業型の事業モデルにとっては追い風だ。実際、ルネサスには技術提供の打診が度々来ていた。

ルネサスは経営再建の過程で半導体の品ぞろえを絞り込んだ。権利はあっても使っていない技術を、外販により有効活用する狙いもありそうだ。

英調査会社IHSマークイットの杉山和弘シニアアナリストは「アームなどの先行企業は顧客企業の半導体開発をサポートする体制に強みがある」と指摘する。ルネサスにとっても支援体制の構築が課題になる。

ルネサスは車載半導体など特定分野では世界で1、2を争う高いシェアを持つが、半導体全体でみると10位以下の中堅だ。研究開発や買収など競争力強化に必要な資金は今後も膨らむ一方だ。垂直統合型の既存事業に加え、技術そのものを収益につなげる経路を広げることで稼ぐ力を高めたい考えだ。(龍元秀明)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報