2019年8月20日(火)

ウミトロン、IoTで賢い養殖 魚のエサやり効率化

日経産業新聞
2018/9/25 6:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

養殖関連のスタートアップ企業、ウミトロン(東京・港、同名の親会社はシンガポール)は、ベンチャーキャピタル(VC)などから12億2千万円を調達した。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や衛星データを活用して養殖業を効率化するための技術を開発している。共同創業者の藤原謙氏と山田雅彦氏に今後の戦略を聞いた。

――今回調達した資金の使い道は。

藤原謙共同創業者

藤原謙共同創業者

藤原氏「エサやりシステム『ウミガーデン』の実用化に向けて、これまでよりも規模を広げて実証実験するのに活用する。愛媛県愛南町や地元の漁協と連携し、町内の養殖事業者にウミガーデンを20台設置して来年の3月まで実験をする計画だ」

山田氏「養殖業向けの保険のためのデータサービスの実証実験にも資金を充てる。これまでは海洋上の環境を定量化するのは難しく、赤潮や台風で養殖業者が被害を受けたとしても被害額を評価しにくかった」

「IoTや衛星から得られるデータを活用して、飼育環境を定量化するなどして、生育中の魚の資産価値を評価する仕組みを作れないか実験する。データは保険会社に提供し、サービスの開発に役立ててもらう構想を描いている」

――養殖業はどんな課題に直面していますか。

藤原氏「養殖魚のエサとなる魚粉の価格が高騰している。養殖生産が広がりエサの需要が高まっているためだ。養殖業のコストのうちエサ代が半分以上を占め、経営を圧迫する要因になっている」

――ウミガーデンはどんな特徴がありますか。

藤原氏「自動でエサやりする装置は既に実用化されているが、魚がエサを食べているのか確認できなかった。ウミガーデンはカメラでエサを食べているかを確認できるため、食いつきが悪ければスマートフォン(スマホ)の操作でエサやりを中止できる。センサーで取得した海のデータを分析してエサの量や与えるタイミングを最適化し、無駄を省くことでエサ代を1割削減する」

人手不足の観点からもエサやりの効率化が欠かせない

人手不足の観点からもエサやりの効率化が欠かせない

「養殖業の働き方改革にも貢献したい。養殖業は生き物を相手にしているため、土日も誰かが出勤して面倒を見なければならない。人口減に直面する地方都市では、担い手を確保するのは簡単ではない。ウミガーデンはスマホによる遠隔操作でエサやりができるため、外出もしやすくなる」

――海外展開の予定は。

藤原氏「欧州では大規模な養殖事業者が自前でシステムを開発しているため、中小の事業者が多い日本やアジアで需要があると見ている。インドネシアのエビ養殖業で、一度実証実験をした。海外では養殖業は成長産業で、生産量を伸ばすために手厚い初期投資をする傾向がある。さらに実験をするためにパートナーを探している」

■ ■ ■ 記者の目 ■ ■ ■

藤原氏によると海中は環境が変わりやすく魚への影響も大きいが、陸上に比べてデータ収集が難しく、これまで謎が多かった。センサーを置くにも電源や通信技術など壁がいくつもある。IoTの普及などでデータ収集のコストが下がったほか、省電力の技術などを搭載して障壁を乗り越えた。まずはエサやりの効率化と保険のためのデータ収集から開発を始めたが、現場に足を運んで養殖業者の悩みや課題を聞きながら新たな解決策を提供する考えだ。

国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の養殖生産量は2016年に8千万トンと11年に比べて3割増えた。天然の漁獲量は9千万トン強で横ばいが続いているのと対照的で、大きく成長している。世界の人口は足元の76億人から50年に1.3倍の98億人に増える見込みで、動物性たんぱく質の需要は急拡大するとみられている。乱獲による海洋資源の枯渇が日常の食卓にも影を落としつつあるなか、養殖業の重要性は高い。ウミトロンへの関心も国内外で高まりそうだ。  (若杉朋子)

[日経産業新聞 2018年9月25日付]

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