米シェールに貿易戦争の影 中国が24日にLNG報復関税

2018/9/21 13:11
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中国が24日、米国の液化天然ガス(LNG)に報復関税を発動する。米国産LNGの対中輸出が落ち込むのは必至だ。米国は屈指の成長市場を失い、中国からの投資が細るリスクを抱え込む。相場への影響は目先限られるが、貿易戦争は米シェールガス産業の成長に影を落としかねない。

中国の報復関税はLNG貿易の流れを一変させる可能性がある=ロイター

トランプ米政権は24日、対中制裁関税の第3弾を発動する。中国は600億ドル分の輸入品に報復関税をかけ、LNGには10%を課す。

中国は大気汚染対策で燃料を石炭から天然ガスに切り替える政策を進め、2017年には日本に次ぐ第2位のLNG輸入国に躍り出た。米国からの輸入量は前年比6倍に急増したが、全体に占める比率は1割に満たず、代わりの調達元は多い。

中東カタールの国営企業カタールガスは10日、中国石油天然気(ペトロチャイナ)にLNGを22年間供給する契約を結んだと発表した。ロシアも供給余力がある。「東シベリアから中国へのパイプラインが来年稼働し、北極圏からのLNGも増える」と石油天然ガス・金属鉱物資源機構の原田大輔担当調査役は話す。

一方、米国にとって中国は3番目のLNG輸出先だ。17年は総輸出量の15%を占めた。

代わりの顧客と期待するのが欧州だ。9月に入り、米ベンチャーグローバルLNGはスペインの石油大手レプソルに20年間供給すると発表。米シェニエール・エナジーはスイスの資源商社ビトールと15年契約を結んだ。

中国は米国以外から調達を増やし、欧州は米国産の輸入を増やす――。売り手と買い手が玉突きのように組み替わる余地は大きい。生産国も消費国も増え、流動性が高まっているからだ。「貿易戦争は貿易の流れを完全に変える可能性がある」と米調査会社S&Pグローバル・プラッツのデーブ・アーンスバーガー氏はみる。

アジアのLNGスポット(随時契約)価格は100万BTU(英国熱量単位)12ドル前後と、3年10カ月ぶりの高値圏だ。「冬に向けて中国は早めに在庫を積み増しており、短期的に関税の影響はさほどない」と住友商事グローバルリサーチの舘美公子シニアアナリストは指摘する。「米国産の仕向け地が中国以外に変わるだけ」(日本のトレーダー)との声は多い。

市場が注視するのは長期の影響だ。LNG生産・輸出には多額の投資が必要。貿易戦争の長期化は中国の米国産LNGへの投資に冷水を浴びせる。「関税は米国の競争力をそぎ、ロシアやカタールのプロジェクトを後押しする可能性がある」(英バークレイズのサミュエル・フィリップス氏)

米国ではシェールガスの増産が当面続く。需要の伸びしろが大きい中国の囲い込みに出遅れれば機会損失は長引く。トランプ氏が仕掛ける貿易戦争のツケは、米シェール業界にも回ってくる。

(久門武史)

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