提供精子の治療受付停止 慶応大、出自知る権利影響
第三者の提供精子を使った不妊治療を長年実施してきた慶応大病院が、提供者の減少を理由に新規の患者の予約受け付けを停止したことが21日、分かった。
提供者への説明の際に、生まれた子供に遺伝上の親を知る権利を認める動きが世界的に広がっていることを伝え始めた結果、提供者が減少したとしている。
同病院は治療の1年前に予約を受け付けており、停止したのは8月の予約分から。提供が回復する見通しは立っておらず、この方法の継続について10月に有識者を交えた会議を開く。
この不妊治療は「非配偶者間人工授精(AID)」と呼ばれ、無精子症などの病気で男性不妊に悩む夫婦を対象に匿名の第三者から提供された精子を使って人工授精する。同病院では1948年に始まり、年間約1500件の治療が実施されている。2014年には、AIDによって生まれた医師が遺伝上の親に関する情報開示を求める問題も起きた。
担当する田中守教授(産科)は「日本で出自を知る権利が認められた場合、2人の親が存在してしまう可能性がある。法整備によって、安全で安心な提供システムを確立する必要がある」と課題を指摘した。〔共同〕