サウジ政府系ファンド、初の銀行借り入れ
1兆2千億円、皇太子の「脱石油改革」を支える

2018/9/20 16:51
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【ドバイ=岐部秀光】世界最大の石油輸出国サウジアラビアの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は国際銀行団から110億ドル(約1兆2300億円)の融資を受けることで合意した。石油に頼らない国造りを目指すムハンマド皇太子の改革を推進するための資金調達を狙っていた国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)が事実上、断念に追い込まれ、政府は穴埋めを迫られている。

通常は原油販売などで生じた余剰資金を将来世代のために投資する政府系ファンドが、銀行から資金を調達するのは異例。PIFのルマイヤン総裁は17日の声明で「長期の調達戦略のための借り入れの第一歩だ」と述べた。PIFは詳細を明らかにしていないが、14~16の国際金融機関が参加し、日本の有力銀行も含まれているとみられる。

国際金融機関が大きな関心を示したことで、当初予定と比べ金額が大きく、金利は低くなった。投資ファンドへの融資は政府向けに比べリスクが大きいが、サウジとの長期的な関係を重視し、金融機関が殺到したもようだ。サウジ政府やPIFは今後もさらに借り入れを増やさざるを得なくなる可能性がある。

借りたお金を投資し、そのリターンをあてにする構図は、国際金融市場の環境変化がもたらすリスクに国家の改革をさらしかねない。

経済の多角化をめざす皇太子の改革は、アラムコの株式売却で見込んだ1000億ドルを元手にPIFを世界最大の政府系ファンドに育てるというシナリオだった。ところが、ニューヨークやロンドンの市場の上場基準が厳格なことや法的リスクの大きさが明らかになり、算段が狂った。

PIFは保有する石油化学大手サウジアラビア基礎産業公社(SABIC)の株式をアラムコに売り渡すことも検討している。PIFはSABIC株の7割を握っており、売却すれば、およそ700億ドルが転がり込む。

PIFがサウジの改革を支える大きな柱になることに変わりはない。問題はPIFによるサウジ国内の巨大プロジェクトや外国企業への投資が長期的な発展にどうつながるかが不明瞭なことだ。

PIFは米配車アプリサービス企業ウーバーテクノロジーズに出資し、米電気自動車メーカー、テスラの株式も取得した。こうした出資は、外国企業の対サウジ投資や同国の産業育成へ直接にはつながらない。人口が増えるサウジにとって若者たちの働き口をつくることが差し迫った課題だ。

皇太子が熱心な、紅海沿岸に未来都市を建設する事業「NEOM」の投資額は5000億ドルとされ、多くをPIFが調達しなければならない。

PIFは2017年、ソフトバンクグループと「10兆円ファンド」を発足させた。米ブラックストーン・グループとは400億ドル規模のインフラ投資ファンドを設けた。

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