吹奏楽、高校野球との深い縁 独自曲 甲子園沸かす(もっと関西)
とことんサーチ

2018/9/20 11:30
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毎年10月に開催される全日本吹奏楽コンクールの高校の部は「吹奏楽の甲子園」と呼ばれる。今年も各地区の予選を勝ち抜いたえりすぐりの30校が本選(10月21日、名古屋国際会議場)に出場するが、歴代の出場校の名前を眺めると野球でも甲子園常連という強豪校が多い。野球と吹奏楽の間には、どんな深い関係があるのだろうか。

まず歴史を調べるため、関西吹奏楽連盟(大阪市北区)を訪ねた。全日本吹奏楽コンクールは今年で66回目。第3回までは戦前・戦中で、戦後は1956年に再開。この第4回の高校の部で、関西代表の天理(奈良県天理市)が1位に輝いた。創部は戦前の36年で、全日本コンクール出場35回を数える古豪だ。

天理は野球でも54年春以降、甲子園に春23回、夏28回も出場し、3度全国制覇。かつてのPL学園(大阪府富田林市)と並ぶ強豪だ。その名門の技量豊かな吹奏楽部が主導する甲子園での応援は他校にも多大なる影響を与えた。

特に名高いのが「天理ファンファーレ」。選手が出塁したタイミングで演奏する、明るく勇ましい調べは今や全国の高校が演奏し、プロ野球の応援でも定番になっているが、実は天理が甲子園で約60年前に始めたのが起源という。

その天理から全日本コンクール常連の座を引き継ぐように台頭したのが大阪桐蔭(大阪府大東市)だ。

2006年、梅田隆司さん(66)が総監督として吹奏楽部を率いるようになると、史上最速の創部2年目で全日本コンクール出場。野球部もこの頃まさに上り調子で、05年夏は中田翔選手(現日本ハム)を擁し甲子園4強。浅村栄斗選手(現西武)が3年生だった08年夏は、91年夏以来2度目の全国制覇を果たした。今夏には史上初の2度目の春夏連覇も遂げている。浅村選手と同学年という当時の部員(27)は「あの時、あの場所で吹いた経験は一生自慢できる」と振り返る。

「甲子園の大観衆の前での演奏は格別。演奏会では大きなホールでも2500人程度だが、その20倍近くだから」と梅田さん。関係者によると、甲子園での演奏を機に吹奏楽部が演奏会に招待されるケースもあるという。演奏機会が増えることで技術が上がり、野球部と並び立つ強豪に育つという循環も生まれてくる。

大阪桐蔭は毎回、新曲を採用する。選ぶのは「選手の口ずさみやすい曲」(梅田さん)で、流行歌に演歌、映画やアニメの主題歌と何でもあり。「You are スラッガー」という完全オリジナルの応援曲もあり、今夏は主砲、藤原恭大選手の打席で演奏された。

独自曲を作ったり、他校に先駆けて特徴あるアレンジをしたりする「オリジナル性の高い応援」は、実は関西の強豪校に共通する特色だという。直近では近江(滋賀県彦根市)が今春から高校野球では珍しい洋楽ベースの応援曲を導入し、斬新さが評判を呼んだ。吹奏楽部顧問、樋口心さん(42)は「どうせなら目立ちたい。これが近江の応援と認識され、生徒たちのやりがいにもなる」と語る。

「近畿勢の応援=オリジナル性」という構図が成り立つ理由は何か。「高校野球を100倍楽しむ ブラバン甲子園大研究」などの著書がある梅津有希子さんは「天理やPL学園などの影響が大きい」と指摘する。

梅津さんによると、天理に加えてPL学園にも「ウイニング」「ヴィクトリー」などの代表的なオリジナル曲がある。両校野球部の圧倒的な強さ、スタンドの応援の格好良さが重なり、「ああいう応援をしたい」という憧れが近畿の高校に醸成されてきたという。

最近では動画投稿サイト「ユーチューブ」などで応援の動画が簡単に見られることもあり、大阪桐蔭の「You are スラッガー」をコピーする高校が増えるなど、応援曲の拡散はさらに加速する傾向にあるという。

一方、象の雄たけびを管楽器で表現した「アフリカン・シンフォニー」は今では定番の応援曲だが、そもそもは智弁和歌山(和歌山市)が87年に採用したことで全国に広まった。同校の吹奏楽部元顧問、現教頭の吉本英治さん(63)は「PL学園の演奏する壮大な曲に憧れ、うちは少しアップテンポな曲でそれに対抗したいと思った」と振り返る。

ここでPL学園の名前が出てきて、なるほど歴史はつながっているわけだと感じた。甲子園が身近な関西ならではの距離感、野球だけでなく応援にも全力を注ぐ強豪校の存在が、アルプススタンドを華やかな場所にしてきたのだった。

(大阪・運動担当 影井幹夫)

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