2019年5月25日(土)

スパインラボ IT保育、ふれあい充実

日経産業新聞
コラム(ビジネス)
2018/9/19 6:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

保育園向け業務管理システムを提供するスパインラボ(東京・港)。保育士の事務処理から保護者との連絡共有、将来は備品のシェアリングなど、保育関連全般をまとめて管理できる情報システムの構築を進めている。導入施設は1600園を超えた。IT(情報技術)によって、大人が子どもと触れ合う時間と質を高めることを事業の軸に置いている。

スパインラボの小池義則社長

スパインラボの小池義則社長

保育園の朝は通常、電話が鳴りやまない。発熱など子どもの体調不良で園を休む連絡がひっきりなしに入るからだ。特に風邪が流行する冬は電話がつながらず、保護者がいらだつこともある。

保育園運営のグローバルキッズはこの課題解決に動き出した。10園でスパインラボの保育業務管理システム「コドモン」を採用。年末までに約120の全施設(学童保育除く)で導入予定だ。

「保育は介護や医療に比べてIT化が遅れている。保育士が子どもと向き合う時間を増やすために、ITで業務の効率化は不可欠だ」。グローバルキッズの増田隆史経営企画部長は言う。

コドモンはスマートフォン(スマホ)やタブレットを使って保護者と保育士との連絡や、保育士の保育業務入力ができるシステムだ。多くの園は今も、保育士が手書きやパソコンで幼児の登園記録を入力している。コドモンは保護者が登園時に、ICカードを専用の読み取り端末にかざせば登園情報が入力される。

園を休む場合はスマホアプリでクリックすれば電話せずに連絡できる。電話がつながらずに連絡までに時間がかかったりすることがなくなる。

子どもを迎えに行く際も便利になる。急な仕事や交通トラブルで迎えの予定時間より遅れそうなとき、アプリ操作で会社や電車内から簡単に保育園に連絡できる。

「保護者に見えないところでの保育士の負担はかなり大きい」。スパインラボの小池義則社長はコドモンの一番の狙いを語る。認可保育園の場合、園児ごと市区町村に申請する保育時間や保育料の入力・計算が必要だ。クラスごとの月次や週次の指導計画の作成など事務作業は多い。

だが保育士の一番の仕事は園児と接して育むこと。待機児童問題が社会課題となり、園児の受け入れ数ばかり話題となっているが、保育は預かれば済む話ではない。

グローバルキッズは全園でコドモンを導入する予定だ

グローバルキッズは全園でコドモンを導入する予定だ

「自分の子どもも保育園に通っており、園の先生たちの疲弊は人ごとに思えなかった」。小池社長はコドモン開発のきっかけをそう振り返る。スパインラボは2009年に創業し、主に中小企業のシステム開発受託を手掛けていた。12年に知人から保育園のシステム開発の依頼が舞い込む。市区町村への請求管理システムだ。そのころ子どもも生まれた。

保育園の実態を調べるなかで、保育士不足の理由は給与の低さだけではないことを知る。IT化が遅く、非効率な業務が多いことがわかった。ネット経由でソフトを提供する「SaaS」形式で、14年に試行版を開発。15年に製品化した。

システムはシンプルで使い勝手を高めることにこだわった。スマホやタブレットの操作に不慣れな中高年の保育士がフリー契約で働いているケースが増えている。難しい操作ではかえって業務負担が高まるためだ。

スマホをかざして登園・降園を管理するICカード対応もその1つ。保育士がタブレットを使って保育のちょっとした合間に事務作業できるようにした。保育園の声を聞きながら操作画面や機能を変えていった。

全園で導入予定のグローバルキッズは当初、他の会社のシステムを使う予定だった。だが「操作性で当社社員や保育士の声を反映しにくいシステムだった」(増田部長)。コドモンを知って切り替えた。

コドモンの導入数は1600園を超えて園児は14万人にのぼる。年末までに2千園を目指す。

小池社長の視線の先は保育士の業務効率化だけではない。「来年にはコドモンを通じて保護者向けサービスを充実させる」。成長と共にすぐに使わなくなるおもちゃや本をコドモンの利用者間でシェアリングできないか検討している。

保育記録をシステムで一元管理するため、保育に関するビッグデータが得られる。「データから子どもの発達についてきめ細かく分析して、保育に役立たせたい」(小池社長)

スパインラボは小池社長をはじめ、約20人の社員の半数が子育て中だ。社員や保育士など生の声を基に機能を充実させ、コドモンを保育のプラットホームに育てる考えだ。   (榊原健)

[日経産業新聞 2018年9月19日付]

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