2019年6月18日(火)

地価上昇、地方の各所で 18年基準地価

2018/9/19 6:30
保存
共有
印刷
その他

地方の各所で地価が上昇している。国土交通省がまとめた2018年の地価調査(基準地価、7月1日現在)では全国平均が全用途で27年ぶりに下落から上昇に転じた。地方圏では上昇地点の数(全用途)が2890に増え、全国の半数近くを占めた。なかでも札幌、仙台、広島、福岡の地方4市の上昇率は三大都市圏を上回り、全国をけん引している。

東京圏

東京圏の上昇地点数は2098。地価の上昇率は全用途で1.8%と前年(1.3%)より拡大した。用途別には商業地が4.0%上昇し、全体を底上げしている。

東京圏の商業地をエリア別に細かくみると、東京都内は23区が7.2%上昇した。上昇率が5%以上のエリアが千代田、中央、港といった都心区だけでなく北、墨田、板橋、足立といった周辺区に広がっている。多摩地域でも府中市、日野市、稲城市などで上昇率が高まった。

神奈川県では東京23区に隣接する川崎市が4.2%上昇した。特に武蔵小杉駅のある同市中原区は店舗需要が堅調で上昇率が5%以上に及んだ。横浜市の上昇率は3.3%だった。

埼玉県も東京近郊で高い上昇率があった。さいたま市は4.0%上昇だが、大宮駅や浦和駅の周辺エリアの上昇率は5%以上に達している。千葉県内も浦安市や市川市など東京23区の隣接地で5%以上の上昇率がみられた。千葉市は2.4%の上昇だった。

一方、東京圏の住宅地は1.0%の上昇だ。細かく見ると東京23区が4.3%上昇した。なかでも荒川区など都の北東部で上昇率の拡大が目立っている。JRの上野東京ライン開業などで都心へのアクセスが改善したためだ。

実際、荒川区内の西日暮里駅近くの地点が東京圏の住宅地で最も上昇率が高かった。川崎市の上昇率は1.7%、さいたま市が1.6%だった。

大阪圏

商業地は京都府の上昇率が2017年(5.7%)を大きく上回る7.5%となり、都道府県別で2年連続の首位となった。訪日外国人の急増に伴い宿泊施設の建設用地の需要が強い。

上昇率最大は京都市東山区の八坂神社そばで29.2%だった。ホテル用地の需要が多かった市内の中京区と東山区は既に用地供給が細り、JR京都駅がある下京区やゲストハウス向け用地がある上京区に需要が波及。下京区は20.8%、上京区は12.8%上昇した。

クリサス心斎橋(大阪市中央区)

クリサス心斎橋(大阪市中央区)

大阪府の上昇率も17年(5.0%)を上回る5.7%となった。最高価格は訪日客でにぎわうミナミ(難波・心斎橋)の商業施設「クリサス心斎橋」で1平方メートルあたり1680万円。17年まで4年連続で最高価格だったキタ(梅田地区)の複合施設「グランフロント大阪南館」(1620万円)を抜き、3月の公示地価に続いてミナミの調査地点がキタを逆転した。

兵庫県の上昇率は0.9%。再開発計画が始まった三宮の調査地点の上昇率は全国8位の24.4%。

住宅地は大阪府の上昇率が0.2%と10年ぶりに上昇。大阪市のほか北大阪地域や堺市などでもマンション用地の需要が強い。

京都府は17年まで10年連続で下落していたが、18年は横ばい。府南部や北部などの過疎化が深刻な地域は下落が続く一方、市内では訪日客向けの宿泊施設になり得る土地の需要が高まり、地価を引き上げた。

兵庫県は1.1%の下落。神戸市が0.5%上昇したほか阪神間も住宅需要が堅調だが、北部では下落が続くなど二極化している。

名古屋圏

名古屋圏では商業地が3.3%上昇した。名古屋市は6.5%伸びた。名古屋駅前の大規模開発が一巡したが、名古屋市郊外や隣県の岐阜・三重への利便性などを背景に名駅前の人気は衰えていない。

繁華街の栄地区では再開発の期待が地価を押し上げている(名古屋市中区)

繁華街の栄地区では再開発の期待が地価を押し上げている(名古屋市中区)

2027年のリニア中央新幹線の開業を控え、17年までにJRゲートタワーなど立て続けに高層ビルが開業した。就業人口は名駅前に集中し、飲食店や物販店などの一大商圏を確立した。人材採用を狙ったオフィスや出張者・訪日外国人の受け皿としたホテルなどの需要も旺盛だ。

国内外の投資家が活発な取引を続け、地価上昇につながった。駅東側の「名駅野村ビル」は上昇率が24.5%で、全国の商業地で7番目の伸び率を示した。名駅前の地価は上昇し続け「これ以上、上がらない『天井』近くまで達した」(三幸エステート)との声も出ている。

再開発の動きは名駅から東側に移り、百貨店の跡地開発など大型プロジェクトが控える。オフィスやホテルの需要も高まり、東側の伏見・栄地区での地価上昇も目立つ。

住宅地は名古屋圏で0.8%、名古屋市で1.6%伸びている。都心回帰の動きに伴って、住居や投資の目的でマンション需要は高い。

上昇幅では愛知県長久手市(3.9%)、日進市(2.9%)と名古屋市東部が伸びた。自動車産業が集積する西三河地域にも近く、トヨタ自動車の本社がある同県豊田市を含め、ファミリー層の戸建て需要が堅調だ。

福岡圏

福岡圏の商業地は大幅な上昇が続いている。福岡市全体では11.1%の上昇で、リーマン・ショック前の07年(15.2%)に最も迫る伸び率となった。にぎわいの中心地である博多区と中央区がけん引。一方で、東区でも2桁の伸びになるなど、ホテルや商業施設などの建設用地の需要が周辺に波及してきた。

建設が進む「天神ビジネスセンター」。右奥は福岡ビル(福岡市中央区)

建設が進む「天神ビジネスセンター」。右奥は福岡ビル(福岡市中央区)

博多区は訪日外国人でにぎわうJR博多駅周辺を中心に、供給不足のホテル建設ラッシュが続く。上昇率は17年(14.4%)を上回る15.2%となった。

中央区では「天神ビッグバン」と呼ばれる、高さ制限を緩和してビルの建て替えを促す再開発プロジェクトへの期待が高まっている。オフィス不足を背景に具体的な再開発計画が控える。小学校の跡地には、高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン」が入る複合ビルの開発も決まった。上昇率は13.5%となり、17年(10.8%)を上回った。

福岡市中心部では東京や大阪のデベロッパーも交えた開発用地の取得競争が激化。地元からは不動産投資の過熱を懸念する声も聞こえる。「ホテルは開発用地が高騰し、回収期間が延びている」(地元金融機関)

その分、博多や天神にアクセスしやすい周辺部に投資マネーが流れ込む傾向が鮮明になってきた。福岡市東区の商業地の上昇率が7.0%から10.0%に伸びたほか、福岡市に隣接する大野城市は8.6%から9.8%に。住宅地も同様の傾向で、都心部のマンションは高値で手が出にくくなっており、周辺部の用地需要が高まっている。県内の住宅地のうち、もっとも上昇率が高かったのは、大野城市内の駅周辺だった。

北九州市の住宅地は0.1%の伸びとなり、20年ぶりに下落・横ばいから上昇に転じた。長期間下落した結果値ごろ感が出てきたためで、「投資物件の利回りも福岡市より優位性がある」(不動産業界関係者)との指摘があった。

 ▼圏域 東京圏は多摩地区などの一部を除く東京都と神奈川、埼玉、千葉、茨城の4県の東京寄りの地域。大阪圏は大阪府全域と京都、兵庫、奈良の3府県の大阪府寄りの地域。名古屋圏は愛知県の大半と三重県の一部。福岡圏は福岡県内。地方圏は東京、大阪、名古屋の三大都市圏以外の地域。地方4市は札幌、仙台、広島、福岡。

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報