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ドル、16年ぶり高値 強い米国にマネー集中

トランプ氏はけん制

ドルが高い。様々な通貨に対する総合的な価値である実効レートで8月に16年ぶりの高値を付けた。米景気は好調で、利上げでも日欧の先を行く。アルゼンチンなど新興国経済への不安もあってマネーがドルに向かっている。ただ急なドル高は米景気に逆風で、多くの新興国の経済も揺らす。トランプ大統領は米利上げをけん制しており、貿易に続き、通貨でもさや当てが起こる可能性も出ている。

国際決済銀行(BIS)が集計するドルの名目実効レートは8月には一時126.91まで上昇した。2016年12月の直近高値を超え、02年4月以来の高さになった。あと1%ほど上昇すれば、データの残る94年以降で最高となる。

背景にあるのは米景気の強さだ。景気拡大はすでに10年目に入ったが、財政出動の効果で景気は陰りをみせていない。企業業績も好調が続く。物価上昇率も米連邦準備理事会(FRB)が目標とする2%を達成しており、金利正常化で日欧の先を進んでいる。金利の高い通貨にマネーが向かいやすくなっており、ドルは昨年末から8%ほど上昇した。

新興国不安も影響している。昨年まで世界的な緩和が続く中、成長が見込める新興国へ投資資金が流れ込んでいた。だが、アルゼンチンやトルコで経済不安が起こり、お金の流れに異変が生じている。アジアや南米の比較的経済が安定している国からもいったん先進国へ資金を戻す動きが広がっている。

リスクオフのもとでもかつてのように円が上昇しづらくなっていることも、相対的なドルの強さにつながっている。

日本企業は海外進出を強めており、ここ数年は年10兆~20兆円規模の対外直接投資を続けている。加えて、日本で超低金利が続くなか、生命保険や投資信託などの資金が海外に流れている。こうした長期マネーの影響が強いため、リスクオフの局面でも投機筋主導での円高が起こりづらくなっている。

00年代初めまでは米政権はドル高を志向していた。グローバルに活躍する企業が増えた近年は、ドル安が景気を下支えするとの姿勢が強まっている。08年のリーマン危機後には日欧に先んじて積極な金融緩和を進め、米景気の回復につなげた。

ドル高が続くと2つの点で世界経済に影を落とす恐れがある。1つは世界経済をけん引する米景気への悪影響だ。グローバルに展開する企業のドルベースの採算が悪化する。もう1つは新興国だ。急激な資本流出はインフレや債務負担の増大につながり、経済を不安定にする。

トランプ米大統領はドル安を志向している。7月には中国や欧州を「低金利で通貨安に誘導している」と批判した。一方で、FRBの利上げは「好ましくない」と複数の米メディアに語った。

9月下旬には日米首脳会談や貿易協議(FFR)が開かれる。FFRでは「米国が円安と日銀の金融緩和に修正を迫る可能性もある」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)。市場では「経済情勢からはドル高が続く可能性が高いが、トランプ大統領の出方次第でドル安へと反転する可能性にも備えないといけない」(為替ディーラー)との声が多い。(後藤達也)

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