リラ安歯止め効果は限定的か 実態経済は苦境 とどまる政治リスク

2018/9/13 22:47
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【イスタンブール=佐野彰洋、ロンドン=篠崎健太】トルコ中央銀行が大幅利上げを決め、13日の欧州外国為替市場ではトルコの通貨リラに買いが膨らんだ。ただ、リラの下落に歯止めを掛けられるかどうかは不安要素も多い。今後一段のインフレが見込まれていることや、リラ急落の原因となった米国との対立が解消していないためだ。金融引き締めを嫌うエルドアン大統領の存在もリスクだ。実体経済の苦境は着実に深まっている。

中銀が利上げに踏み切るのは6月以来、2会合ぶり。7月の前回会合では市場予想の大勢に反し、利上げを見送っていた。トルコ在住の米国人牧師拘束問題を巡る米国との対立で8月にリラが急落した際にも、利上げに動かなかった。

利上げを催促し続けてきた市場は「遅ればせながら正しい方向への決定だ」(トルコのQNBフィナンスバンク)。「予想された3%程度の利上げも難しいとの見方も出ていた中で、積極的な引き締め姿勢が驚きを持って受け止められた」(在英の邦銀ディーラー)など一様に評価の声が聞かれる。

ただ、相場を反転させるだけのインパクトには欠けそうだ。理由のひとつはインフレ見通しだ。輸入物価の上昇で9月以降20%を超え、高止まりするとみられている。「利上げは実現したが、銀行間の実勢金利に追い付いただけ。中銀は10月の次回会合でも利上げを継続しなければならない」(エコノミストのウール・ギュルセス氏)からだ。

政治外交面では北大西洋条約機構(NATO)同盟国でありながら、関税の引き上げなど異例の報復措置の応酬を繰り広げた米国との関係改善が不可欠となる。

10月には2016年7月のクーデター未遂事件に関わったとして起訴された米国人牧師の次回公判が予定されている。11月の米中間選挙までに解放が実現しなければ、トランプ米大統領は支持基盤のキリスト教保守派にアピールするためにも、追加の対トルコ制裁を科す懸念がある。

リラ売りを抑え込もうと政府が小手先の対策を繰り返していることも実体経済の重荷となっている。8月、銀行監督当局は国内銀行が外国投資家と行う為替スワップの取引量を、規制上の自己資本の25%までに制限した。

投機筋によるリラ売りを封じる狙いだったが、相場変動のリスクをヘッジしたい企業や銀行の取引まで制限する副作用が発生し、市中金利の高騰を招いた。中銀によると、8月末時点での企業向け貸出金利は加重平均で年32%。3カ月で13%近く上昇した。

リラ安の影響で自動車リースや電力、小売りなど「借り入れは外貨、収入はリラ」という内需型企業を中心に破綻や社債償還の不履行が相次ぎ表面化している。資金繰りの悪化や資材コストの上昇で、建設工事の中断や遅延も目立つ。

10日発表の4~6月期の実質成長率は前年同期比5.2%増と1~3月期に比べ約2ポイント減速した。消費や投資の落ち込みで19年にはマイナス成長に転じる可能性が指摘されている。

不規則な言動を繰り返すエルドアン氏の存在もリスクだ。同氏は13日の金融政策発表前にも利上げをけん制する発言を行い、リラが売られる場面があった。市場では中銀がインフレ抑制に向けて独立した政策判断を続けられるのか、先行きを危ぶむ声も残る。

英運用大手フィデリティ・インターナショナルのポール・グリア氏は「利上げで一定の信認は取り戻したが、国際債券市場への正常なアクセスが再び可能になるか見極める必要がある」と指摘する。

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