iPhone、シェアに照準 価格帯広げ5万円~12万円超
【シリコンバレー=佐藤浩実】米アップルは12日、スマートフォン「iPhone」の新戦略を発表した。画面サイズが6.5インチと過去最大で価格も最高(12万円超)となる高級機種を投入するほか、旧機種については値下げし約5万円の機種も用意した。先進国では高単価の、新興国では割安の機種をそれぞれ売り込み、シェア拡大を狙う。ただ、中国勢などとの競合も激しく成長持続は課題含みだ。
iPhoneはアップルの売上高の約6割を占める基幹商品で、この日は3つの新機種と2つの旧機種の値下げを発表した。米調査会社のIDCによると、iPhoneの台数ベースの世界シェアは2018年4~6月期で12%。ピーク時の11年には20%弱あったが、じわじわとシェアを下げている。価格帯を広げることで巻き返しをはかる構えだ。
新機種は日本を含めて9月21日から順次発売する。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社は13日、新型iPhoneの予約受け付けを一部の製品を除き14日から始めると発表した。
目玉のひとつは現行の最上位機種「X(テン)」よりも画像処理などの精度と速度を上げた「XS Max」と「XS」。画面の大きさと価格はそれぞれ6.5インチで1099ドル(日本では税別で12万4800円)から、5.8インチで999ドル(同じく11万2800円)から。それぞれ有機ELを採用した。
大画面は動画視聴やゲームでの利用に適しているとされており、電話やメール以外でのスマホ利用をさらに促す狙いがある。アップルは定額制の動画配信の準備も進めており、サービスを利用してもらいやすくする布石ともいえる。

さらに外観は「XS」と同じだが、有機ELではなく液晶ディスプレーを画面に使い、カメラもレンズ1つにとどめ比較的安くした「XR」を749ドル(同じく8万4800円)からで発売する。
フィル・シラー上級副社長は新機種について「画面は大きいが(端末としての)サイズは小さい」とも強調した。画面外側の部分を狭くしているためで、例えば画面が6.5インチの「XS Max」は同5.5インチの8プラスとほぼ同じサイズにとどめている。画面が大きくなっても片手で扱えることを重視した。
新技術に敏感な層から最先端でなくとも一定レベルのスマホを持ちたい層まで、先進国の顧客を嗜好にあわせて幅広く取り込みたい考えだ。

機種の高価格化はスマホの出荷台数が減る中でのアップルの収益を支える重要戦略だが、この日は低価格帯の品ぞろえも強化する姿勢を見せた。
同社は12日から旧機種のiPhone7を449ドル(約5万円)に100ドル(約1万千円)値下げ。「8プラス」と「8」についてもそれぞれ同じく100ドル引き下げた。アップルにとって中国やインドなど新興国の攻略はなお課題。特にインドではグーグルがスマホ基本ソフト(OS)のシェアで約9割を握るなど圧倒的な差をつけられている。
アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は「これまでよりも多くの人にiPhoneに手が届くようにした」と価格帯を広げた狙いについて説明した。
新興国では華為技術(ファーウェイ)や小米(シャオミ)といった中国メーカーなどが機能を最小限に抑えたスマホを1万円以下で売るなど「新興国ならではの市場が生まれている」(グーグル幹部)。スマホを軸としたサービス事業の厚みなどが評価され時価総額が1兆ドルを超えるアップルだが、成長維持には新興国の開拓が不可欠だ。