豊島区のサービス移住後もOK 秩父市に高齢者施設
東京都豊島区は高齢者らが埼玉県秩父市に移住しても、区の行政サービスを継続して受けられる優遇策を創設する。秩父市に受け皿となる高齢者施設を整備し、2019年秋に入居者らを対象にモデル事業を始める。人口減少が深刻な秩父市への移住を増やすとともに、都市の過密と高齢化が進む豊島区のシニア世代が郊外に転居しやすい環境をつくる。

事業は西武鉄道沿線の姉妹都市の提携を踏まえたもの。両区市は14年に民間有識者が公表した「消滅可能性都市」に挙げられた。豊島区は地価が高く高齢者施設の整備候補地が少ない課題があり、見守りサービスのある秩父の施設などへの移住を支援する。
20世帯が入居できる高齢者施設を西武秩父駅から徒歩約15分の市有地に整備する。ノウハウを持つコミュニティネット(東京・千代田)が市から土地を借り受け施設を建設し、運営する。隣接地には交流施設を市が建設し、移住関連の事業に活用できるようにする。
豊島区から同施設に転居した人には、福祉など区の一定の行政サービスを受けられるようにする計画だ。福祉器具の購入費補助や敬老祝い金など、秩父市にない行政サービスの提供を検討する。法律などとの整合性を含め、詳細は今後詰める。
秩父市は4月、豊島区から移住者を呼び込むため、市有住宅に市の住民票がなくても入居できるよう要件を緩和した。市有住宅の入居者にも豊島区の一部行政サービスを引き続き提供する方針。
区内の文化施設のイベント情報なども移住者に発信する。平日は秩父の自然豊かな環境で生活し、週末は豊島区の文化施設で芸術を鑑賞するようなライフスタイルを提案するという。一方、豊島区に住む若い世代に週末などを使い、秩父訪問を促す取り組みも進める。
11日、高野之夫区長は記者会見し「区のサービスを受け続けられるようにして移住を決断しやすくする。2地域居住の全国モデルにしたい」と述べた。同席した久喜邦康市長は「豊島区と西武線の始発、終点の位置関係で35年間交流してきた。消滅可能性都市とされた立場から共通の課題に取り組む」と語った。