2019年7月19日(金)

給付奨学金で学業専念 20年度から拡充
高等教育無償化を読み解く(下)

2018/9/12 6:00
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2020年度の導入を目指している高等教育無償化では、「返済が不要な給付型奨学金」が拡充される。食費や住居・光熱費などをまかなう生活費を学生本人に支給するものだ。前回解説した「授業料の減免」の拡充と併せて、政府は学生が学業に専念できる環境づくりを整えるとしている。

国の奨学金事業は、独立行政法人の日本学生支援機構(JASSO)が実施している。大きく分けて(1)返済が必要な貸与型(有利子、無利子)(2)返済不要の給付型――の2つがある。

20年度に大きく拡充する給付型が始まったのは17年度だ。住民税非課税世帯で自宅外から通う私立の学生ら約2500人に支給した。18年度に本格実施し、非課税世帯で、国公私立を問わず、各高校が推薦した成績優秀者ら約2万人を対象とした。月2万~4万円を支給している。

20年度の拡充では、対象を年収380万円未満の世帯までに広げる。授業料減免と同じように、3つの所得区分で全額、3分の2、3分の1を支給する。進学後の成績や、外部理事の登用といった高等教育機関の質など、国が支援する条件は授業料減免制度と共通だ。

支給額は修学費、課外活動費、通学費、保健衛生費、食費などをまかなう想定で、具体的な額を検討中だ。自宅外から通う学生は住居・光熱費、食費が余分にかかることを考慮して加算。私立の場合は同窓会費などを除いた学校納付金の平均額の2分の1程度を支給する方針だ。「国公立・自宅」「私立・自宅外」など属性を大まかに分け、各属性で決めた一定額を毎月支給することになりそうだ。

大学などの受験料や、20年度導入の大学入学共通テストで活用される英語の民間試験の受験料も一定額を支給する。

文部科学省は今後、給付型奨学金、授業料減免の拡充について詳細を詰め、19年の通常国会に関連法案を提出する考えだ。20年4月に進学して支援を受ける場合は、19年度のうちにJASSOの手続きをすることになりそうだ。現行制度では進学する前年度の春に募集が始まるが、新制度は法案の審議状況などにもよるため、具体的なスケジュールは決まっていない。

学生への経済的支援は国以外も行っている。JASSOの調査では、16年度に奨学金制度を実施したのは5028団体。制度数は1万1204制度に上る。利用した奨学生は55万4675人で、支給総額は1471億円だった。

大学など教育機関だけでなく地方自治体、民間企業、公益法人などが独自の奨学金制度を実施している。学業やスポーツ、芸術などで優秀な成績を収めたことを条件にしていたり、医療・看護など学ぶ分野を限定していたり、対象は様々だ。

JASSOのホームページでは、約1800団体(8月時点)の奨学金制度から自分の条件に合った制度を検索できる。国の制度や進学先などを踏まえながら、どのような支援を受けるか幅広く検討する必要がある。

■生涯賃金に8千万円の差 高校卒と大学・大学院卒

高等教育無償化の財源には、2019年10月に予定する消費税率10%への引き上げによる増収分1.7兆円の一部が充てられる。多額の税金を使う理由として政府が掲げるのは「格差の固定化の解消」だ。

日本学生支援機構などによると、大学進学率は全世帯平均で5割のところ、住民税非課税世帯は推計で2割。学歴は収入に影響し、格差が固定することになる。労働政策研究・研修機構の調査では男性の生涯賃金は大学・大学院卒が3.2億円で、高校卒が2.4億円と、大きな差があった。

文部科学省は無償化によって低所得者層の進学率が向上し、高等教育機関の学生の2割程度が支援の対象者になるとも推計している。

また政府は少子化対策の一環としても位置付けている。理想とする子供数をもたない理由として「子育てや教育にお金がかかりすぎる」を挙げる親が多い。19年10月から始まる幼児教育・保育の無償化と併せて、家庭の教育費負担を減らす狙いだ。

(佐野敦子)

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