2018年11月17日(土)

米、国際協調に再び逆行 国際刑事裁を痛烈批判

トランプ政権
北米
2018/9/11 19:00
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【ワシントン=中村亮】トランプ米政権が国際司法の分野でも国際協調から逆行する動きを強めている。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は10日、国際刑事裁判所(ICC)が加盟国でない米国の兵士を捜査することについて「国家主権の侵害だ」と痛烈に批判した。米国がICCの正当性を公に批判すれば米国と同じように非加盟の中国やロシアが捜査協力する機運がしぼみ、国際司法での協調は後退する恐れがある。

ボルトン氏は10日の講演で、ICCがアフガニスタンでの軍事作戦で米兵や米中央情報局(CIA)関係者が拷問などの戦争犯罪行為をした疑いがあるとして捜査開始を検討していることについて「完全な茶番だ」と批判した。捜査が始まればICCの判事や検察官に米国への入国禁止などの制裁措置を科すと明らかにした。

ボルトン氏は以前からICCに懐疑的な見方を示していた。ICCは2002年に設立されたが、当時のブッシュ(子)政権は加盟を見送った。米メディアによると、この際に米兵が訴追されるリスクが高まるとして、設立条約への加盟見送りを進言したのが当時、国務次官を務めていたボルトン氏だ。講演では当時の見送り決定を「最も誇りに思う成果の一つだ」と強調した。

サンダース米大統領報道官は10日の記者会見で、ICCがアフガン戦争に関わった米兵の捜査に着手するかを近く判断すると通告してきたと明らかにした。「トランプ米大統領はどんな手段を使ってでもICCの不公正な訴追から米国や同盟国の国民を守ると約束している」と強調した。

トランプ政権は米国の方針に沿わない多くの多国間枠組みから脱退してきた経緯があり、国際司法の分野でも孤立を深めることになる。ボルトン氏はICCに協力しないのは「米国民や米社会の利益を最優先する」としたトランプ政権の公約の一環だと説明した。

米国の批判は各国の連携に水を差す公算が大きい。ICCには中ロやインド、サウジアラビアといった大国が加盟していない。非加盟国は捜査に協力する義務はなく任意となる。米国がICCを「非合法」と批判すれば他国がICCに協力しない口実になり、捜査での連携に消極的な姿勢を強めるとみられる。

ICCからの離脱を後押しする可能性もある。フィリピンは今年3月、違法薬物の摘発で死者が出ることもいとわない強硬な手法を巡ってICCと意見が対立して離脱を表明した。

米欧関係の新たな火種になる可能性もある。欧州諸国は人道問題などの解決に力を入れており、ICCを重視してきた。米欧関係はトランプ政権の貿易摩擦や在イスラエル米大使館の移転、イラン核合意の離脱をめぐって溝が目立っている。

ロイター通信によると、ICCは11日の声明で「法の支配に基づいて着実に行動していく」と述べ、米国の圧力にかかわらず捜査を続行する考えを示した。

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