2018年9月26日(水)

世界の「カワサキ」復活へ、覚悟の原点回帰

コラム(ビジネス)
自動車・機械
2018/9/12 11:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

 川崎重工業が2017年末に発売した大型二輪「Z900RS」が好調だ。発売から半年が経過しても勢いは衰えず、18年上半期でカワサキが7年ぶりに国内の大型二輪(排気量250cc超)販売で首位に立つ原動力となった。同社の名車「Z1」(型式名)を源流に、真っ向から「オートバイ」らしさに向き合った造りが新旧のバイクファンの心を捉えている。

川崎重工業の大型二輪「Z900RS」

川崎重工業の大型二輪「Z900RS」

 源流となったZ1は1970年代に発売され、日本モデルの「Z2」(同)と共に爆発的な人気を誇った。Zシリーズは「世界のカワサキ」を代表する4気筒エンジンのブランドに育っており、Zの名を冠するモデルは100を超えるロングセラーだ。

 Z900RSもこの系譜を受け継ぐが、当初からその構想があったわけではない。開発が始まった14年時は環境規制の強化から複数の車両で生産終了が検討されていた。商品企画を担った赤松良祐氏は「自社のベーシックラインの穴埋めが主眼にあった」と話す。

■ブランドの歴史、受け継ぐ

 赤松氏は商品コンセプトを定めるべく、デザインを担当した松村典和氏と日、欧のユーザーと面談を重ねた。浮かび上がったキーワードが「ブランドの歴史」だ。

 赤松氏がユーザーの声から感じたのは「持ち物も含めて自身のスタイルを確立している人が多い」半面、懐かしい車なら「中古を買う」という現実的な面。性能は良くて当然で、連綿と受け継がれた歴史背景のある車が求められていた。

70年代に発売されて爆発的な人気を誇った「カワサキ・900 Super4(型式名Z1)」

70年代に発売されて爆発的な人気を誇った「カワサキ・900 Super4(型式名Z1)」

 カワサキらしいオートバイを表現する上で、15年には「Zブランドの採用が社内でも円滑に決まった」(松村氏)。開発コンセプトは「タイムレスZ」。Zシリーズのこれまでの歴史を全て内包する車体を目指して製品開発に入った。

 ベースの車体は「Z900」だが大半の部品を新調した。最大の難関はZ1のシンボルだったティアドロップ(涙のしずく)形状の燃料タンクだ。第二設計部の萩尾清二課長は「本来なら不可能だった」と打ち明ける。直接載せると操縦時のハンドル角が制限され、航続距離にも不安が出る。

 Z900RSはZ1の外観をそのままに、中身を根本から造り変えた。「従来ない設計の寸法管理やタンク製法」(萩尾氏)を採用。外からみればタンク内に燃料ポンプやエアクリーナーまで内蔵されている。開発時の初期モデルから燃料容量は3リットル多い17リットル(航続距離で320キロメートルほど)に伸ばし、タンクの形状も工夫して十分なハンドル角を確保できるようにした。

 エンジンもZ900とは性格が異なる。現代の技術のまま最大限の乗り味を表現できる水冷式を選択。Z900がスポーツ走行が主眼なら、Z900RSは「エンジンを中低速まで振って街中でもすっと走れる」(赤松氏)ように設計した。

■排気音まで試行錯誤

 「エンジンをかけた瞬間の雰囲気」(萩尾氏)にもこだわった。加速時の吸気音にこだわった車体はあるが、排気音まで研究したのは初めて。各社の二輪10台ほどの音を聞き比べる実験や音の科学的な解析を経て膨張室(チャンバー)や排気管の構造を作り込んだ。通常の倍以上に及ぶ試作の末、試作品で「このモデルにどんぴしゃな音」(同)にたどり着いた。

 高齢ライダーも扱いやすいようにマフラーだけで1キログラム軽くして、Z1では2本だったサスペンションは1本に減らした。一方で中央部と先端部の幅が異なるハンドル形状、丸形ミラーやメーター針の角度まで細部でZ1を連想させる。

「Z900RS」にはカフェレーサー仕様のモデルも追加された

「Z900RS」にはカフェレーサー仕様のモデルも追加された

 車名は「すぐ車体がイメージできるが、実は過去に使っていない組み合わせ」(赤松氏)だ。日本では3月、名車の雰囲気に先端の乗り心地を加えたZ900RSに「カフェレーサー」仕様も発売した。

 ブランドカラーの「ライムグリーン」をまとう車体が欲しいと松村氏が提出したスケッチが「歴代最速」で開発許可を得てそのまま具現化に至ったという。「グラフィックも原案のまま。見た瞬間に共感できた」(赤松氏)。築き上げた歴史に最新の味付けも加えた力作の快進撃は、当面止まりそうにない。

(企業報道部 山本夏樹)

[日経産業新聞2018年9月12日付]

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