蔵書のゆくえ その1 甲南大学教授 田中貴子
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本棚を眺めていて、自分が死んだらこれらはどうなるのかと考えたことは一度や二度ではない。おそらく、大量の書籍や資料を所有する人なら誰でもその経験はあるだろう。稀覯書(きこうしょ)の類はないものの、私の血や肉を作り上げてきた材料が詰まっているからだ。フランス文学者である桑原武夫の蔵書が遺族に無断で寄贈先の図書館に廃棄されたという「事件」は、その意味で痛恨事だった(日経新聞2017年4月28日夕刊)。...
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