2018年9月21日(金)

太陽光入札「落札ゼロ」で見えた、政府の挑戦的な価格

科学&新技術
BP速報
2018/9/11 23:00
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日経クロステック

 大規模な太陽光案件を対象にした第2回入札の結果が明らかになり、「落札者なし」という結果に終わった。この背景には、今回から非公表にした上限価格の水準が、大方の予想よりも低かったことがある。

■参加者は募集枠を下回る

 入札を担った一般社団法人の低炭素投資促進機構は2018年9月4日、太陽光発電(2MW以上の特別高圧連系案件)を対象にした第2回入札(18年度上期)の結果を公表した。それによると、入札に参加したのは9件・196.96MWで、募集容量(250MW)を下回ったものの、すべてが上限額である15.50円/kWhを上回り、「落札者なし」という結果になった。

不落の案件(事業計画)一覧(出所:一般社団法人・低炭素投資促進機構)

不落の案件(事業計画)一覧(出所:一般社団法人・低炭素投資促進機構)

 今回の入札では、上限価格を非公表とした。これは、上限価格を公表した第1回入札への反省からだった。第1回では、応札量が募集容量を下回ったこともあり、上限価格で落札された案件(事業計画)が2つあった。そのため8月2日に非公開の調達価格等算定委員会(以下、算定委)を開催して上限価格を決め、非公表のまま、入札を実施した。

 その結果、入札した9件のうち、最低価格の案件でさえ16.47円/kWhで、上限価格を約1円超えていた。「落札者ゼロ」という結果を見る限り、算定委や政府の想定しているコスト水準に開発事業者が追い付いていないことになる。

 ただ、現時点であまり競争的になっていない国内の入札制では、参加者は、政府の決める上限価格をやや下回る額で札を入れようとする傾向が強くなる。第1回入札では、上限価格を同年度の非住宅太陽光の買取価格と同額の21円/kWhと設定し、事前に公表していた。第2回も同じ考え方をとるなら、18円/kWhとなり、実際に、入札した9件のうち8件は18円/kWh以下ではあった。

 一方で、非公開の上限価格を決めた算定委での公開資料には、上限価格の決め方に関し、「海外の動向などを含めて参考にし、より一層の価格低減トレンドを踏まえる」との文言もあり、第1回に比べて挑戦的な価格設定にすることを示唆していた。「挑戦的」の下げ幅を1円とするなら、第2回の上限は17円/kWhとなる。低めに札を入れた案件でも、16円台/kWhにとどまったのは、こうした読みだったと推測される。

■政府「2020年に15円/kWh以下目指す」

 実際にふたを開けてみると、上限価格は15.50円/kWhだったわけで、政府は「挑戦的」の下げ幅を2.5円も引いていたことになる。

 こうした価格を決めた背景を算定委の参考資料から読み取ることもできる。資料では「日本でも、20年頃までには太陽光のLCOE(均等化発電原価)が15円/kWh以下になる」との分析結果を示しつつ、「太陽光発電の運転開始期限は3年」と追記している。

日本の事業用太陽光発電のコスト動向(出所:経済産業省)

日本の事業用太陽光発電のコスト動向(出所:経済産業省)

 つまり、今回の上限価格は、同じ年度の非住宅太陽光の買い取り価格からの「引き算」ではなく、入札対象の大型案件に求めるトップランナー基準として「20年に15円/kWh以下のコストを目指す」ことを想定していることが伺える。今回の入札参加者がこうした政府と算定委の意図を読み切れなかったとも言える。

 大規模案件で未稼働の認定件数の多い国内太陽光市場では、短期的に新規開発が伸びず、入札制度を導入しても競争的な環境になりにくい課題がある。そのため、入札制度では算定委の決める上限価格が事実上、特高案件を対象とした買い取り価格に近い側面を持ってしまう。

 こうしたなかで今回、上限価格が非公開になったため、新規案件を持つ開発事業者が様子を見た面もある。入札に参加したのは9件・約200MWと募集枠250MWに達しなかったものの、入札参加可能との通知を受けた案件は15件・334.4kWと募集枠を超えていた。第2回の上限価格は、第3回の前には公開されることから、3回目以降は、それを基準にコストターゲットを検討しやすくなるとの思惑が働いた可能性もある。

 逆に言うと、今回の上限価格の決定では、第3回以降の入札に大きく影響することから、今後のコスト削減を促すためにも、低めの価格に設定せざるを得なかったとも言える。その意味で今回の「落札ゼロ」は、ある程度、想定されたとも言える。

 「落札者なし」とはいえ、今回の入札では4つの案件(合計136MW)が第1回の最低額(17.20円/kWh)を下回る16円台/kWhを付けるなど、着実にコストは下がっている。「20年に15円/kWh」という政府の想定が見えてきた中、「それならこんな工夫で新規開発に取り組もう」と前向きに考えるか、「それならもう止める」と手を引く事業者が増えるのか、国内の太陽光市場にとって第3回入札が、今後を占うカギになりそうだ。

(日経BP総研クリーンテックラボ 金子憲治)

[日経 xTECH 2018年9月10日掲載]

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