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日本のスポーツが抱える強化体制の欠陥
編集委員 北川和徳

2018/9/12 6:30
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1994年広島アジア大会で敗れた直後の男子レスリング選手からこんな愚痴を聞いた。「代表チームの合宿にいくと、ライバル校の監督の指導を受ける。その監督の教え子も代表チームにいる。そこで自分をすべてさらして練習できると思いますか」。弱点に気付かれるかもしれないし、練習環境や代表の選考に関しても、公平に扱ってくれるとは思えないということだった。

選手ファーストとはほど遠い状況だが、四半世紀近くが過ぎても、同じような悩みは解消されていない。大学やクラブのチームで選手を育てている指導者が、ナショナルチームで強化責任者や監督を務めているのは、お金や人材に乏しい日本のスポーツ界ではよくあることだ。選手強化の体制の大きな欠陥であり、それが原因となるトラブルが頻発している。

5日、宮川選手への暴力行為について記者会見する速見コーチ=共同

5日、宮川選手への暴力行為について記者会見する速見コーチ=共同

いつのまにかナショナルチームと自らのチームの強化を混同する。教え子ではない他チームの代表候補を冷遇してしまう。レスリング女子では至学館大学を拠点に多数のメダリストを育成してきた栄和人前強化本部長のパワハラが問題になった。世間を騒がしている体操の塚原光男、千恵子夫妻のパワハラ疑惑も、結局はそこにいきつく。

速見佑斗コーチの宮川紗江選手への暴力指導の実態を知れば、塚原夫妻が強引に2人を引き離そうとしたのは当然だったと思う。自分が同じ立場だったとしても、かなり強い言葉で宮川選手の説得を試みただろう。一方で、速見コーチに心酔する宮川選手が、それを高圧的でパワハラ行為だと感じたのも無理はない。この点は個人的には塚原夫妻に同情するが、パワハラであるかどうかの認定は第三者委に任せるしかない。

体操界から塚原夫妻に批判噴出

驚いたのは宮川選手の告発をきっかけに、体操界から塚原夫妻への批判が噴出したことだった。

速見コーチの暴力指導とは別の問題なのだが、塚原夫妻が運営する朝日生命体操クラブが有力選手を集めることへの反感は強い。「ライバルになりそうな選手は根こそぎ持っていかれる」という声も聞いた。

塚原夫妻の職務一時停止など、10日の臨時理事会の決定事項を発表する日本体操協会の山本宜史専務理事(右)と具志堅幸司副会長=共同

塚原夫妻の職務一時停止など、10日の臨時理事会の決定事項を発表する日本体操協会の山本宜史専務理事(右)と具志堅幸司副会長=共同

塚原夫妻は否定しても、他のチームは引き抜かれたと思っている。有望選手を好条件で招くことは批判されることではない。よりよい環境を得るのは選手にとってもありがたい。問題は単独チームである朝日生命クが事実上、日本女子代表の強化の中心となっていることだ。

光男氏は日本体操協会の副会長。千恵子氏は女子強化本部長。朝日生命クの体育館はナショナルチームの練習拠点にもなっている。体操協会は「2020東京五輪特別強化プロジェクト」を進めているが、これに参加した選手は長期間にわたって強化本部の指揮の下で練習することになる。強化の手法としては結果につながる当然のやり方なのだが、「強化本部=朝日生命ク」と考えている他のチームの指導者が教え子を送るのに抵抗を感じるのは当然だろう。

極端な例えになるが、サッカー日本代表の監督にFC東京の監督がその立場のまま就任、代表合宿もFC東京の施設でFC東京が集めたスタッフの支援でやっていると想像するとわかりやすい。しかも塚原夫妻はこうした他チームの意識にまったく無自覚なようだ。

同じような強化体制になっているのは体操だけではない。2020年東京五輪に向けて関心が高まり、競技の裾野が広がるほど、こうしたトラブルは起きやすくなる。お金がない、人がいない、はもう言い訳にはならない。

(20年東京五輪開幕まであと681日)

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