中国開拓へテンセントと連携 日立、IoTの足場作り

日立製作所は10日、中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)とあらゆるモノがネットにつながる「IoT」分野で提携したと発表した。製造や物流など幅広い分野でIoT技術を活用した新サービスを共同開発する。中国市場の開拓を加速したい日立と、主力の消費者向けサービス以外に企業を対象にした事業を拡大したいテンセントの思惑が一致した。
長期的にIoT分野で連携していく方針で両社が基本合意した。中国などで開発するスマートシティーのインフラ構築や製造・物流分野でのIoT活用で両社の関連技術やノウハウを持ち寄る構想だ。
日立の中国での売上高は2018年3月期で1兆410億円。全社に占める割合は約1割にとどまる。昇降機のほか、自動車やスマートフォン関連の電子部品、航空関連事業を手がける。
日立は、鉄道やビル向けの製品とセンサーなどIoT技術を組み合わせ、インフラの稼働状況などを先読みして製品・サービスの付加価値を高めるIoT事業に今後の成長を懸ける戦略だ。自社のIoT基盤「ルマーダ」を使い、19年3月期には関連売上高を1兆円超に高める計画だ。
ただ、中国には通信領域で事実上の規制が残っており、IoT分野での参入は簡単ではない。テンセントはIoTサービスに欠かせないクラウドサーバーを多く保有する。テンセントのサーバーを使うことで中国全土でIoTサービスを提供できるようになる。日立は中国で収益を稼ぐために、テンセントとの提携が不可欠と判断したもようだ。
8月末には中国四川省とIoTを含むデジタル関連技術で提携すると発表した。中国政府は15年に「中国製造2025」構想を掲げ、通信や鉄道、自動車、エネルギー、素材、医療分野でIoTなど次世代技術を利用した効率化を進めている。産業の高度化に向けたニーズは強く、日立はこの構想に積極的に協力していくとみられる。
一方、テンセントは日立と組むことで、IoT関連技術の獲得を狙っているとみられる。中国で約10億人以上に対話アプリ「微信(ウィーチャット)」を提供するほか、ゲームや音楽配信など幅広い事業を手がけている。17年12月期の売上高は2741億香港ドル(3兆8757億円)と前の期比で50%以上伸びているが、今後の成長分野として自動車分野への投資を進めており、日立の自動車部品部門との連携も模索する可能性がある。
日立は19年3月期に連結ベースで売上高10兆円、営業利益8000億円の目標を掲げており、海外売上高比率は55%以上まで引き上げる。なかでも中国は毎年10%以上売上高が伸びており、北米に次ぐ規模となっている。昇降機や鉄道など設備の販売だけでなく、IoT関連サービスを組み合わせることで利益率を高める狙いもある。