2018年9月24日(月)

ファンとの縁、神戸に勇気 元プロ野球オリックス球団代表 井箟重慶さん(もっと関西)
私のかんさい

コラム(地域)
関西
2018/9/11 11:30
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 ■元プロ野球オリックス球団代表の井箟重慶さん(83)は岐阜県出身。関西との接点を持ったのは、米国を拠点に仕事をしていた50代のころだった。

 いのう・しげよし 1935年旧満州(現中国東北部)生まれ、岐阜県出身。上智大卒。丸善石油(現コスモ石油)などに勤務後、89年にオリックス球団常務、90年から11年間球団代表を務め、95年パ・リーグ優勝、96年には日本一を経験。現在は関西国際大学名誉教授。

 いのう・しげよし 1935年旧満州(現中国東北部)生まれ、岐阜県出身。上智大卒。丸善石油(現コスモ石油)などに勤務後、89年にオリックス球団常務、90年から11年間球団代表を務め、95年パ・リーグ優勝、96年には日本一を経験。現在は関西国際大学名誉教授。

 米国丸善石油(現米国コスモ石油)で副社長を務めた後に会社を辞め、ニューヨークで友人とコンサルタント会社を立ち上げて間もない1989年だった。オリックスが球団職員を公募するという新聞記事を読んだ。「変わった会社だな」と興味を持ち、学生時代から野球をしていたこともあり、履歴書を送ってみた。

 日本で面接を受け、米国に戻るとすぐに採用の連絡が来た。1100人の応募者から幹部で採用されたのは私を含めて2人。慌てて米国の家を売り、ばたばたと帰国することになった。

 ■常務として入団し、翌90年には球団代表に就任した。

 宮内義彦オーナーからは「球団は親会社の広告媒体ではだめ。単体で利益を出すように」と言われた。私も同じ考えだった。だが、いざ経費節減で経営を合理化しようとすると、チームは「お金は親会社が出すものでしょ」となかなか協力してくれない。マスコミにも「オリックスでなくケチックス。強くする気がないんだ」とたたかれた。

 遠征先では朝昼晩と宿舎でバイキング形式の食事が出ていたが、ナイターの翌日は選手は遅くまで寝ていて、朝食はフロントの4、5人が食べるだけ。これは無駄だろうと朝のバイキング廃止を言うと、マスコミが「食事も出さない球団だ」とたたく。こんな調子だから初めは苦労したが、だんだんと職員と現場の意識も変わっていった。

 ■91年、本拠地を兵庫県西宮市の西宮球場から神戸市のグリーンスタジアム神戸(当時)に移した。

 西宮球場は立派だがお客が入らなかった。コンサルタント会社を使って理由を探ると、競輪場と兼用であることがネックだという。周辺の学校に通う女子学生が足を運びにくい雰囲気がある、と。88年に阪急ブレーブスを買収し、若い人にも球場に来てもらおうとしていた時。思い切って本拠地を移すことにした。

 北海道や千葉など名乗りを上げた候補地の中から神戸を選んだ決め手は、神戸市が所有するグリーンスタジアム神戸があったこと。球場の広告や飲食の収入を折半し、球団にもお金が入る提案を市が了承してくれたことも大きかった。

 オリックスとして初のリーグ優勝を果たした95年は優勝目前で本拠地での4連戦に全敗。地元での胴上げがかなわず、ファンに何を言われるだろうと覚悟したが、ヤジを言う人は一人もおらず「あした頑張れ」と励ましてくれた。神戸のファンはいいなと思った。

 営業の職員が地元を熱心に回ってファンを獲得したことが大きかった。この年は1月に阪神大震災が発生。球場周辺の仮設住宅に住む人から「オリックスに勇気づけられている」と手紙をもらった時は、困難な状況でも神戸で試合をしてきてよかったと思った。

 そうして神戸の人たちと縁を築いた球団が、大阪の京セラドームに軸足を移したのは寂しい限り。神戸での試合はめっきり少なくなり、地元ファンには「出ていかれた」との思いが強いだろう。「オリックス・バファローズ」と、球団合併した近鉄のチーム名をつけているのも中途半端だ。

 ■米国と国際都市の神戸で働いた経験から、外国人の視点で物事を見ることが多い。

 外国の企業がどんどん東京に進出しているが、彼らの不満は大きい。東京はどこも混雑し、家賃も交通費も高い。そこで安い土地が多い関西に外国人が住みよい街をつくり、日本支社ともども呼んではどうか。

 関西の大企業や銀行は役所が集中する東京に本店を移し、本庁上がりの自治体首長も東京を見て「右へならえ」。これでは横並びの街になってしまう。外国人を呼ぶ一方、企業は本社を関西に戻すべきでは。そうすればまた違った形で関西が発展していくと思う。

(聞き手は大阪・運動担当 合六謙二)

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