2018年11月19日(月)

日ロ首脳が領土問題協議へ 首相、総裁選へ成果狙う

政治
ヨーロッパ
2018/9/10 16:24
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【ウラジオストク=甲原潤之介】安倍晋三首相は10日、ロシア極東ウラジオストクでプーチン大統領と会談する。北方領土問題の進展に向け、北方四島での共同経済活動について協議する。20日投開票の自民党総裁選での3選を見据え、今回の会談で領土問題の前進を狙う。プーチン氏は首相が総裁選後も強固な基盤を維持できるか見極めているとの見方がある。

両首脳の会談は第1次安倍政権から通算で22回目。2018年は5月のモスクワでの会談以来、2回目になる。首相は出発前、羽田空港で記者団に「あらゆる分野で日ロ関係を進めながら、領土問題を解決して平和条約を締結する方向に前進していきたい」と語った。

10日の会談で協議する共同経済活動を巡っては16年12月の日ロ首脳会談で合意した。両政府は北方四島での海産物の養殖や温室野菜の栽培など優先5分野で事業の具体化を進めている。日本は共同経済活動により、四島での両国民の交流を増やし、平和条約締結の前提となる帰属問題の解決につなげたい構えだ。

今回の首脳会談に向け、日本側はイチゴ栽培や観光ツアーなど事業の絞り込みを目指していたが、8月に予定した現地調査団の派遣が悪天候で延期され、作業は遅れている。両国の法的な立場を害さない形でビジネスを実現するための枠組みづくりも進んでいない。

共同経済活動とは別に領土問題を難しくしているのが安全保障をめぐる政策の食い違いだ。

日本は中国の軍拡や北朝鮮の核・ミサイル開発に対応するため米国との同盟関係の強化を進める。17年末には米国の陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入も決めた。

一方、ロシアは北東アジアでの日米同盟の強化を警戒する。日本のイージス・アショアの配備も米国によるミサイル防衛(MD)網の強化の一環とみている。安全保障の要衝である北方領土で軍事拠点化を着々と進め、16年には地対艦ミサイルを配備した。択捉島の空港を軍民共用とし、今年8月には戦闘機の試験配備が報じられた。

日本はイージス・アショアの配備はロシアの脅威にならないと理解を求めるが、安全保障観のズレは根が深い。ロシアは領土を一部でも日本に返還した際、日本に施政権が及ぶ地域での米軍の防衛義務を定めた日米安全保障条約が適用されることを警戒する。プーチン氏は「(領土が)日本の主権下に入れば、米軍の基地が置かれる可能性がある」と指摘する。

ロシアの安全保障に詳しい未来工学研究所の小泉悠特別研究員は「ロシアは自国の望む線で北方領土交渉を進めるため、安保政策で日本に厳しく出ている。日本は米国の同盟国だという懸念は強い」と分析する。ロシアは東方経済フォーラムの期間中に極東で中国を交えた冷戦後最大の軍事演習を計画する。

首相が総裁選で圧勝して強い政権を維持できるかどうかも今後の対ロ外交を左右する。日本政府内にも「プーチン氏は首相が総裁選で勝ったとしても、残りの任期に自身と平和条約交渉を進められる政権基盤を維持できるかをみている」との分析がある。

6月の米朝首脳会談後、プーチン氏と直接会談するのは初めてとなる。北朝鮮問題を巡っても、ロシアは段階的な非核化を唱える中国と足並みをそろえる。日本は米国と共に完全な非核化まで制裁を緩めない立場を貫こうとしている。北朝鮮問題でも日米と中ロが対峙する構図になりかねず、日ロ関係の前進が難しい局面といえる。

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