DA PUMP 歌もダンスも本気が「ダサかっこいい」
1990年代に流行したユーロビートが、再び注目を浴びている。DA PUMPが6月にリリースした、3年8カ月ぶりのシングル曲『U.S.A.』が大ヒットしているからだ。原曲は、ジョー・イエローというユーロビートのアーティストが92年に発表した同名曲。DA PUMP版『U.S.A.』は、YouTubeのMV再生回数が公開から約2カ月で2600万回、8月末には6000万回を超え、「Apple Music トップソング」や「Billboard JAPAN ホット・バズ・ソング」などのチャートで首位に輝いた。この反響を、本人たちはどう感じているのか。

ISSA 自分らが思っていた以上の反応が、いろいろなところで起きているのは、素直にありがたいですね。初めて聴いた時は、「今、俺たちがこの曲かい!」という驚きがありました。ただ、ユーロビートは僕の世代には聴きなじみのある音楽だし、事務所(ライジングプロダクション)的にも、先輩たち(安室奈美恵やMAX)がやってきたジャンルの1つ。違和感はなかったです。僕はどんな歌でも歌えなきゃいけないと思っているので、ユーロビートにも迷いはありませんでしたし、「僕がこの曲を歌ったらこうなる」という(実力の)出しどころでもありました。歌詞の世界は、アメリカ文化に憧れていた自分の幼少期から今までの感覚に近いので、素直に表現できましたね。
一方、他のメンバー6人がこの曲を聴いたのは、ISSAの歌が入った音源だったという。
U‐YEAH 初めて聴いた時は、「あ、すげえ飛び抜けたやつが来たな」と。新しい何かが生まれそうだと感じました。
DAICHI 僕はパソコンで聴いたんですが、出だしで速攻閉じました(笑)。しばらくしてダサいけど、そのダサさが後に残って勝手に口ずさんでしまい、ハマりました。"沼"でしたね(笑)。
YORI ユーロビートって、四拍子っぽい日本人が好きなリズムだと感じましたね。あと、この曲のアレンジには、当時のユーロビートと違う、EDMなどのニュアンスがあると思いました。
ISSA ギターのサウンドを入れるなどのアレンジで、より現代っぽい、新しいユーロビートに仕上がったんじゃないかと思います。それを若い子たちが新しい音楽として捉えてくれている部分があるんじゃないでしょうか。
TOMO EDMがはやり出した頃から「パリピ」的な要素がウケている感じがありましたけど、これまでユーロビートを聴いたことのなかった若い人たちが『U.S.A.』を聴いて、「これってパリピじゃない?」というテンションでウケているのかなとも思います。
最新ダンスをユーロビートで踊る
ダンスも人気を大きく後押しした。片足でジャンプしながら親指を立てて腕を振る「いいねダンス」や、90年代のMCハマーを彷彿とさせる「インベーダーフォーメーション」など印象的なものが多い。振り付けはTOMOとKENZOが中心となり、作られた。
TOMO まず狙ったのは、みんながまねしやすいことです。ユーロビートといえば「パラパラ」で、最初、「パラパラか?」という話も出たんですけど、それじゃ当時のままだと。今、アメリカではやっているダンスを、あえてユーロビートに乗せて変化させた形になってます。
KENZO ユーロビートはBPMが速いので振り付けをシンプルにすることと、少し難しい踊りを見せたほうがいい部分と、その塩梅が難しかったですね。
TOMO 前提にあったのが、まず自分たちが楽しめること。インベーダーフォーメーションは、まさにリハのなかで遊びながら作ったもので。
KENZO ネーミングは、KIMIさんです。「これ、『驚異のインベーダーフォーメーション』でいいんじゃね?」って(笑)。
TOMO DAICHIが名付けた「いいねダンス」も、言葉がポジティブで、広げやすいと思いました。踊りやすさはもちろん、ネーミングも良かった。
KIMI リリースイベントで見ていると、みんなダンスをまねしてくれるんです。狙い通りにハマったなと思います。
CDジャケットやMVなど、ビジュアル面でも「ダサい」と話題を集めた。KENZOは「オフホワイト」のベルト、TOMOは「シュプリーム」のゴーグル…身につける衣装には、実はトレンドをけん引するストリート系ブランドも取り入れているのだが…。

YORI衣装のベースはある程度僕たちが決めました。『U.S.A.』は、原曲は90年代のユーロビートですけど、服は最新のアイテムを取り入れようと。
KIMI ファッションのトレンドも90年代に戻っているので、そんなに的は外していないはずなんですが(苦笑)。
DAICHI みんなが組み合わさることで、絵にパンチが出ちゃったんですよね(笑)。
KENZO ジャケットを見た時は、曲以上にみんな震えていましたね。「ちょっと待ってくれ!」とグループLINEが荒れて(笑)。でも結果として、メンバーそれぞれの認知度は上がりましたね。
KIMI 服であだ名がいろいろ付けられていますからね。
U‐YEAH この間、親子連れの方が握手しに来たんですが、お父さんが子どもに「ほら、"工事現場のお兄さん"だよ」って(笑)。
本気でやってるからダサい?
曲やビジュアルが「ダサかっこいい」と言われながらもSNSを通じて拡散し、MVを見たり、曲を聴くうちにDA PUMPのパフォーマンスのレベルの高さに驚き、ハマったという人も多い。
ISSA 何だかんだとイジってもらえることも含めて、人目に付いていることは本当にありがたい。僕らは「まじめにふざける」をモットーにやってきた、悪ふざけの塊です。自分たちが楽しまないと、見る人に何も伝わらないと思います。今回、曲やビジュアルなどすべてに対して本気でやっていることが「ダサかっこいい」と言われる要因の1つかもしれません。
YORI 「ちょっとダサい」のって、昔から日本人は好きじゃないですか。もろにダサいんじゃなく、何かが見え隠れする変な感じ。
KENZO あと、僕らって「ダサい」と気軽に言えるちょうどいいグループなんじゃないですかね。それって結構大事だと思ってて。ビッグネームに対して「ダサい」とはなかなか言えないだろうし。
KIMI 分かりやすくキャッチーにしたことが、「ダサい」にハマったのかも。
KENZO 個人的にすごく思ったのが、見かけより中身だなと。ダサくても、中身がしっかりしていれば「かっこいい」って言われるんだなとしみじみ思いました。グループのリーダーであり、絶対的なボーカリストのISSA君が、「やっぱりISSAすげえな」って言われるのは誇らしいですし。「次はどう来るんだろう」とワクワクしてくれている人もいて、うれしいです。
ISSA 次の曲についてはまだ決まっていないですけど、今はまだ『U.S.A.』で会いに行けてない所に行きたいというのが一番。DA PUMPは20年以上にわたって、ストリートの文化を継承してきましたが、今回で新しい方向性が加わったことは確かです。次は、意表を突くのか突かないのか、難しいところですね。いずれにしろ、自信を持って出せるものを出しますよ。
(ライター 横田直子)
[日経エンタテインメント! 2018年9月号の記事を再構成]
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