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豊島逸夫の金のつぶやき

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雇用統計の底力

2018/9/10 10:55
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好調な米雇用統計が「トランプ円高」に待ったをかけた。

トランプ大統領の対日通商警告発言により、外為市場では、1ドル=111.40円台から瞬間的には110.40円近くまで円高が急進行していた。しかし、雇用統計発表後、一時は111.20円近傍まで円は急落した。その後、雇用統計由来のドル高・円安要因と通商摩擦懸念の円高要因が拮抗する展開となっている。雇用統計の影響は今後、ドル高要因としてボディーブローのごとく効くだろう。

対して、トランプ氏の対日発言はワンツーパンチのごとく市場に衝撃を与えるが、材料としての陳腐化も早い。トランプ発言がぶれるので、そのたびに市場は短期的に乱高下する。それゆえ、投機筋が好む材料だからだ。

雇用統計に関しては、今回、市場では平均時給にサプライズ感があった。前年比2.9%の上昇は2009年6月以来の上昇幅だ。トレンドを見ても、15年から18年まで上下変動を繰り返しつつ、水準を切り上げる展開になっている。

これまでインフレ率低迷の「主犯格」とされてきた賃金伸び悩み現象が、米国では徐々に解消されつつある。上がらない賃金と原油価格上昇が消費マインドを冷やす、負の連鎖への歯止めも見込まれよう。

米利上げ観測も、9月は動かぬとして、12月利上げ確率が75%にまで上がってきた(シカゴ・マーカンタイル取引所=CMEの利上げ確率予測)。債券市場では、市場のインフレ期待を映す10年債利回りに上昇圧力が再度強まりつつある。米連邦準備理事会(FRB)政策金利との相関が強い2年債利回りも上がってきている。

総じて、賃金上昇が構造要因として市場に影響を与えている。さらに、先週発表された8月のISM製造業景況感指数も61.3と、04年5月以来の高さをつけた。雇用統計とISM指数が共振して、米国経済絶好調を印象づけている。

とはいえ、ドル高は新興国が抱える巨額のドル建て債務を一層重くする。この問題の視点で見れば、米国へのマネー集中がはらむリスクから目が離せない。好調雇用統計は結果的に、新興国経済を圧迫することにもなるのだ。

トランプ大統領は中間選挙を視野に、新興国が奪った雇用の米国回帰をうたうだろう。

政治経済両面で、雇用統計の底力が確認され利用されている。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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