2018年11月16日(金)

関空ルポ 運航一部再開も以前のにぎわいは一変

台風21号
関西
2018/9/9 15:15
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台風21号の被害を受けた関西国際空港。国内線と国際線がそれぞれ一部運航を再開したものの、混乱は続く。タンカーが衝突した連絡橋の自動車道路を利用できるのは空港へのシャトルバスや工事関係車両などに限られ、一般車両は通行停止のまま。鉄道部分は約50センチの横ずれが見つかり、関空までの運転再開にかかる時間は長期となる見込みだ。9日午前、記者は大阪市内から関空まで公共交通機関で実際に移動してみた。インバウンド(訪日外国人)でにぎわっていた状況は一変していた。

りんくうタウン駅から臨時のシャトルバスに乗り換える人々

りんくうタウン駅から臨時のシャトルバスに乗り換える人々

「関西空港へはりんくうタウンでバスをご利用ください」。午前8時30分、南海電気鉄道難波駅(大阪市)では日本語や英語など4カ国語のアナウンスが流れていた。通常なら空港線の特急列車「ラピート」などで関空に直行できるが、現在は対岸にある1つ手前のりんくうタウン駅止まり。このため臨時のシャトルバスが出ている。

難波駅を見渡しても乗客の姿はまばらだ。「通常の日曜日よりも駅を利用する訪日観光客の姿がだいぶ少ない」と南海電鉄の広報担当者は話す。普段ならにぎわう駅周辺の街路でも、観光客の姿は数えるほどだった。

和歌山市在住の50代の女性は「関空を使う予定だったが、中部国際空港発着に変更した。関空がいつ復旧するかわからず困惑している」と急いだ様子でスーツケースを引いていた。

香港の男子大学生(22)は総合インフォメーション前の貼り紙を眺め「高野山に行こうと思っていたが、台風の影響でバスの乗り換えなどが難しそう」と困り顔。SNS(交流サイト)を使ってさらに情報を集めるという。

りんくうタウン駅に並ぶ臨時のシャトルバス(泉佐野市)

りんくうタウン駅に並ぶ臨時のシャトルバス(泉佐野市)

記者も関空に向かうため、難波駅9時14分発の空港急行に乗った。途中、車窓を眺めていると、鉄骨がむき出しになったビニールハウスや瓦が飛ばされブルーシートで屋根の一部を覆った家が目に付いた。

9時50分ごろにりんくうタウン駅に到着。駅には臨時バスの乗車位置などを記載した手書きの案内ポスターがあちこちに貼られており、案内の係員も駅の内外に多く待機していた。

駅の南側のロータリーでは、シャトルバスが8台待機し、電車の発着時間にあわせて5~10分おきに出発していた。「運航を再開した航空会社はまだ少なく、利用客のほとんどが空港関係者だ」とバス乗り場の係員は漏らす。

4日に関空第1ターミナルのコインロッカーに荷物を預け、今朝回収に訪れた大阪市在住の60歳女性は、自然の猛威にあらがえないとしつつも、こう話した。「関空が閉鎖される前に荷物を預けてしまった。しばらく回収できなかったので飛行機を変えたとしても旅行に行けず、大変残念。ドイツに行く予定だったがすべてキャンセルになり台無しだ」

臨時のシャトルバスから降車する利用客(関空第2ターミナル)

臨時のシャトルバスから降車する利用客(関空第2ターミナル)

記者も10時25分、りんくうタウン駅発の関空行きバスに乗車した。約50人乗りだが、客はその半分だった。車線の両側の街路樹は大きく傾いており、プラスチック看板などの破片が至る所に散乱している。関空連絡橋にさしかかると「本当にぶつかったんだ」「がれきがすごいね」などと車内のあちこちでつぶやく声が聞こえた。スマートフォンで動画や写真を撮影する人もいた。

15分ほどで第1ターミナルに到着した。南海電鉄を利用して難波駅から関西空港駅まで特急で向かう場合、通常だと約35分で着く。しかし今回は、臨時バスの待機時間などを含めて1時間ほどかかった。連絡橋が混雑している時間帯だと、もっと時間がかかる。

関空は4日に台風で滑走路や建物の一部が冠水し閉鎖。7日に国内線、8日に国際線の一部がそれぞれ運航を再開した。全日本空輸や日本航空などが利用していた第1ターミナルは浸水による影響が大きく、航空機はまだ発着できない。

利用客がおらず、閑散とした関西空港駅。JR西日本と南海電気鉄道は関西空港駅までの運転を見合わせている

利用客がおらず、閑散とした関西空港駅。JR西日本と南海電気鉄道は関西空港駅までの運転を見合わせている

空港内駐車場にとめていた自家用車を出庫するためターミナルを訪れた羽曳野市在住の会社員、松宮直樹さん(56)は「3日に関空から羽田に飛行機で向かい、帰りの便は欠航で新幹線で帰宅した。車をしばらく取りに行けずレンタカーを利用していたので、戻れてうれしい」と話した。運営会社の関西エアポートは、第1ターミナルビルの部分再開は1週間以内を見込んでいる。

第2ターミナルでは格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションや中国系の春秋航空、全日空、日航の国内線や国際線の運航が再開された。韓国の会社員のパク・ハンビットさん(28)は「ずっとホームページで情報を確認していた。きょうは無事長崎まで向かえる」と手土産を片手に笑みをこぼす。春秋航空で上海に向かうホンジュラスのアナ・サントスさん(37)は「台風の風がとても怖かったが、大阪で食事などをとても楽しめた。予定通りの航空機に乗れてほっとしている」と安堵の表情を浮かべた。

関西国際空港第2ターミナルでは、国際線や国内線の運航が再開した

関西国際空港第2ターミナルでは、国際線や国内線の運航が再開した

運航再開に喜ぶ観光客がいる一方、訪日外国人の間では日本語以外の情報が入りにくいとの声もあがっている。台湾の会社員シュー・ヨンミンさん(38)は、キャンセルになった航空券の振り替えがうまくいかないと不安げな様子だ。「電話もつながらないし情報が少なすぎる。チケットが買えるか不安だったので、関空まで直接話しにきた」と疲れ切っていた。

関西エアポートは早期の完全復旧を目指すとともに、発着便の一部を大阪国際(伊丹)空港などに臨時で移管する計画も浮上しているが、当面は大幅な減便を強いられる。大学生の畑あやかさん(20)と中東美穂さん(20)は「きょう台湾へ出発するが、帰国便の運航予定はまだ発表されていない。無事に帰れたらよいが」と話した。

(大阪経済部 土橋美沙)

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