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毎月分配投信、支払いの9割元本取り崩し 実態確認を

QUICK資産運用研究所 高瀬浩

写真はイメージ=123RF

毎月決算を行い、投資信託の購入者に分配金を毎月支払う「毎月決算型(毎月分配型)ファンド」からの資金流出が一段と進んでいる。不自然で過度な分配金の支払いが敬遠され、資金流入にブレーキがかかったことが大きな背景だ。QUICK資産運用研究所が開発したファンドの分配金の中身を分析する手法によると、2018年(7月末時点)は分配金の約9割が元本の取り崩しで賄われていることが明らかになった。人生100年時代をにらんで退職世代の資産運用として毎月分配型ファンドは再び注目されているが、投資にあたってはこうした実態を知っておくことが大切だろう。

2011年から始まっていた? 毎月分配型の変調

08年9月のリーマン・ショックから10年。毎月分配型ファンドの全体の運用資産残高はリーマン当時に落ち込んだものの、14年末の約43兆円まで拡大が続いた(グラフA)。しかし、その後は一貫して減り続け、18年7月末時点で約26兆円と14年末比で4割減少した。

投信の残高は運用により増減する。これに加え、分配金を支払うとその分、残高は減るが、資金流入が多いと影響は軽減される。逆にいえば、分配金を維持したままで資金流入が細ると残高は目減りしやすい。

年間資金流入額と分配金支払総額を見ると、10年までは一貫して資金流入額が分配金支払総額を上回っていたのが11年に逆転。それ以降は、分配金支払総額が資金流入額を上回る状態が続いており、17年は資金流入どころか流出になっている。分配金引き下げにより、分配金支払総額が15年をピークに減っている。相次ぐ分配金の減額で解約超過の状態に陥ってしまった。

金融庁が「複利効果を得られず、資産形成に役立たない」などとして、毎月分配型の問題点を俎上(そじょう)に載せ始めたのは16年ごろだが、資金の流れは11年ごろから変調を来していたわけだ。投資家は早くから毎月分配型の限界を認識していた可能性がある。

限界とは元本を取り崩してまで分配するという仕組みだ。ここで分配金の中身をおさらいしよう。上場投信(ETF)を除く追加型の株式投信では、個々の投資家が受け取る分配金には2種類あり、運用益を基にした「普通分配金」と元本の一部取り崩しに相当する「特別分配金(元本払戻金)」のどちらか、もしくは両方になる。

分配金に占める特別分配金の割合が多いほど無理な分配をしていることになるが、どちらを受け取るかは投資家ごとに違ってくる。個々の投資家の購入元本(個別元本)は投資時期によって異なり、ある投資家には普通分配金となっても別の投資家では特別分配金になる場合があるからだ。特別分配金を受け取るとその分、個別元本は減額となる。

分配金の中身を運用益と元本取り崩しに分解

毎月分配型に限った話ではないが、投信は運用益が出ているときは普通分配金、出ていないときは元本取り崩しにより特別分配金を出す。分配金を支払うと投信の基準価格はその分下がるが、個別元本と分配後の基準価格を調べれば、普通分配金と特別分配金の額を知ることができる。

その考え方はこうだ。例えば、ファンドを1万円で購入した場合、当初の個別元本は1万円になる。このファンドについて、

(1)1000円の分配金が出て、分配後の基準価格が9500円となった場合、個別元本(1万円)に比べ下がった分の500円が特別分配金となり、残り500円が普通分配金となる。

(2)同じケースで、分配後の基準価格が8500円となった場合、基準価格は分配金の1000円を超えて下がったので、分配金1000円は全て特別分配金となり、普通分配金は0円となる。

(3)同じケースで、分配後の基準価格が1万500円となった場合、個別元本を上回っているので分配金はすべて運用益で賄われたことになり、普通分配金は1000円で、特別分配金は0円となる。

QUICK資産運用研究所はこの考え方に基づき、分配金の中身を分析した。ファンド保有者全員の平均購入単価を計算し、それをファンドごとの個別元本と見なした。毎月分配型ファンド全体について、支払った分配金を運用益と元本の取り崩し分に分解したのがグラフBだ。計算上、分配金は再投資に回さず、すべて現金で受け取ったという前提にしている。

08年以降は元本取り崩しが過半を占めるように

グラフBを見ると、07年までは分配金の大半が運用益で賄われていたのに対し、08年以降は元本の取り崩しが過半を占めるようになったのが分かる。元本取り崩しの状況は13~14年には改善し、分配金の7割程度が運用益で賄われるようになっていたが、ここにきて再度状況が悪化。16年は分配金の約9割、17年は約7割、18年(7月末時点)は約9割が元本の取り崩しとなっている。

個別の大型ファンドの状況を見てみよう。残高上位20本について、14年以降の年間分配金支払額に占める元本取り崩し額の割合を集計して表にした(表C)。20本中10本が18年(7月末時点)の分配金の全額が元本取り崩しとなっている。ファンド保有者全員の分配金を束ねて分析集計しているので、個々の投資家全てが同じ状況だったとは限らないが、傾向として元本取り崩しに依存している状態といえる。

「フィデリティ・USリート・ファンドB」を見ると、14年には分配金の全額が運用益で賄われていたのに対し、それ以降は元本取り崩しの比率が高まり、18年は全額が元本取り崩しになった。これに歩調を合わせるよう、15年以降、分配金は最高額の100円(1万口当たり)から現在の35円まで引き下げられた。他のファンドを見ても、分配金の減額が目立つ。不自然で無理な分配は続かないということだ。

もっとも、元本の取り崩し=運用損ではない。例えば、「フィデリティ・USリート・ファンドB」の1年リターンはわずかだがプラスだ。海外不動産投信(REIT)型の基準価格は足元で回復傾向にあるので、今後、元本取り崩し状況を脱する可能性もある。

人生100年時代、毎月分配型には再評価の動きも

人生100年時代を迎え、毎月分配型ファンドは定期的に分配金を受け取りながら運用を継続していくという点で、再評価する動きもある。従来、資産運用では「資産の取り崩し」には目を向けられてこなかった。しかし、複利効果を働かせながら資産をひたすら積み上げなければならない現役世代に対し、退職世代は積み上げてきた資産を引き出して生活の糧にする必要が生じる。

毎月分配型ファンドでも運用成績が良く、分配金が運用益から支払われている場合は必ずしも否定されるべきではないであろう。問題は運用成績が芳しくない中で元本を取り崩しながら分配金を払い続けているケースだ。毎月分配型ファンドの購入者にはこうした実態を知らずして投資を続けている人も少なくないとみられる。ファンド選びの際は分配金の中身がどうなのか注意すべきだろう。

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