初の「ブラックアウト」 最大火力停止が引き金 - 日本経済新聞
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初の「ブラックアウト」 最大火力停止が引き金

管内の電力がほぼすべて止まる「ブラックアウト」。日本の電力会社で初めての大きな事故に至ったのは、震源地の近くにある石炭火力発電所、苫東厚真発電所(厚真町)に北海道電力が電力供給を依存していたためだ。

同発電所は1、2、4号機の3つの設備がある。経済産業省によると、4号機は地震後の再稼働に向けた作業の中でタービン付近からの出火を確認。1号機、2号機はボイラーが損傷していた。復旧には少なくとも1週間かかる。北電の荒矢貴洋執行役員は同日の記者会見で「そこまで大きい事故は想定していなかった」と語った。

問題は損傷だけでなく、3基が同時に止まったことにもあった。最大165万キロワットの発電能力が使えなくなり、北海道の使用電力のうち半分程度の供給が瞬時に消えた。

これが北電の持つ他の発電所にも影響した。電力会社は電力の周波数を安定させるため、需要と供給が一致するように発電能力を調整する。北電は北海道全域でこうした調整をしている。苫東厚真が消えると他の発電所も次々に止まり、電力会社として初めての「ブラックアウト」に至った。

緊急時に他の電力会社から電気を融通してもらう送電線も機能しなかった。60万キロワットの容量があるが、道内の電力供給が少ない状態では技術的な問題で送電できない。

北電は電力供給の再開に向け、56カ所ある水力発電所のうち26カ所を再稼働した。他に3カ所ある火力発電所も7日中の再開を目指す。経産省によると6日午後9時時点で約47万キロワット分が復旧し、7日朝までに計150万キロワット、7日中に300万キロワットの供給を目指す。ただピーク需要(380万キロワット)には届かない。

送電線などの被害状況によっては復旧に時間がかかる。菅義偉官房長官は6日の記者会見で節電を要請。北電の森昌弘副社長は東日本大震災以来となる計画停電について「場合により、そういうこともあるかもしれない」と述べた。

北電が苫東厚真に依存するようになったのは、2012年に泊原子力発電所(総出力207万キロワット)の稼働を停止したためだ。依存への危機意識はあり、15年には小樽市でガス火力発電所の新設工事に着手。本州の送電線も容量を1.5倍にする工事を進めている。だが、いずれも完成は19年に入ってから。対策が間に合わなかった。

今回の停電は、南海トラフを震源域とする巨大地震や津波の発生が懸念される他の地域にとっても人ごとではない。特に関東地方では東京湾、中部地方も伊勢湾周辺に火力発電所が集中している。東日本大震災後は停止した原子力発電所が多く、火力発電への依存は各社とも高まっている。

北海道と異なり関東や中部地方などの間では電力融通が比較的容易とされるが、東西の周波数が異なるため容量には上限がある。広域で大規模な発電所の停止が発生すれば、そもそも融通する電力がなくなる懸念もある。

大規模で広域的な災害が発生した際の電力の供給体制は検証が必要だ。電力各社は大規模な発電所が損傷する事態などを想定した電力供給などの訓練を実施している。東京電力ホールディングスの小早川智明社長も6日、北海道での停電を受け「我々の設備の運営に生かせるものなどをもらい、改善できるところは反映していきたい」と話した。

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