キリンビバ、ビッグデータで「ファイア」刷新
キリンビバレッジは10月、缶コーヒー「ファイア」ブランドを刷新する。対話アプリ「LINE」と連動させた自販機で集めた顧客データを活用して商品ごとの飲用シーンなどを分かりやすく訴求する。

缶コーヒー市場はペットボトル入り商品の台頭などに押されているが、刷新を機に苦境を打破する考えだ。
顧客データを基にショート缶やボトル缶など7品目を刷新する。ビーコン端末を搭載してLINEと連動させた自販機サービス「タピネス」で収集したビッグデータを初めて活用した。

LINEを起動させたスマートフォン(スマホ)を自販機にかざして購入すると、ポイントが付与される。ポイントがたまると好きな飲料と無料で交換できる。対応する自販機は約2万台ある。
キリンビバは、購入時間や購入者の年齢などのビッグデータを商品開発や販売促進などのマーケティングに生かす。
ショート缶「くつろぎブレンド」では、午後3時前後の休憩をメーンの飲用シーンとして打ち出す。ミルクや砂糖を使用し、缶には「やすらぐ香りと甘さ」と表記。飲用シーンを想定した味わいに仕上げている。
コーヒー市場の変化は激しさを増している。2017年にサントリー食品インターナショナルが「クラフトボス」を発売したことで、ペットボトルコーヒーの需要が拡大する一方、缶コーヒーは苦戦している。自販機での売り上げも低迷している。

飲料総研(東京・新宿)によると、17年の自販機1台当たりの清涼飲料の販売量は前年比1%減の223ケース。コンビニエンスストアやドラッグストアに顧客が奪われ、ここ5年で6%減少している。ファイアの17年の販売量も前年比8%減の2563万ケースだった。競合他社も苦戦する。
利益率の高い缶コーヒーは全体の利益を左右する。キリンビバはビッグデータを他ブランドの商品力強化にも活用する考え。各社も顧客データ収集には力を入れており、競争が激化しそうだ。
(企業報道部 湯前宗太郎)
[日経産業新聞 2018年9月5日付]