2018年9月24日(月)

京都 小劇場の灯守れ 2つの新設計画 地域に根ざし(もっと関西)
カルチャー

コラム(地域)
関西
2018/9/7 11:30
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 京都市で新たな小劇場の開設計画が相次いでいる。劇作家・演出家のあごうさとしらがクラウドファンディングなどで資金調達し、京都駅近くで来夏に開館。劇団「地点」も2021年メドに開設を目指す。京都は近年、小劇場の閉館が続いた。独自の演劇文化の灯を消すまいと、演劇人たちが本腰を入れだした。

■ネット資金募る

「シアターE9京都」の開館予定地で開かれた演劇ワークショップ

「シアターE9京都」の開館予定地で開かれた演劇ワークショップ

 京都駅から南東に歩いて10分ほど。鴨川沿いの元倉庫を劇場に改修する工事がまもなく始まる。新劇場「シアターE9京都」は席数約100。あごうのほか、狂言師の茂山あきら、演劇も手掛ける現代美術家のやなぎみわら京都の演劇人たちが協力して開設する。

 個人や企業からの寄付のほか、クラウドファンディングも活用。あごうらが中心となって協賛企業も募り、1億円を見込む事業費のうち7千万円を集めた。残りは今月下旬からの第2期のクラウドファンディングや金融機関からの借り入れで賄うという。

 あごうは昨年8月に閉館した劇場、アトリエ劇研の元ディレクター。同劇場は京都を代表する小劇場で、世界的に評価の高いパフォーマンス集団「ダムタイプ」や、マキノノゾミ主宰の劇団M.O.P.なども活動拠点とした。しかし、資金難やオーナーの高齢化などで33年の歴史に幕を閉じた。

 新たな才能を発掘、育成するため、貸館料は「東京の半額に抑えたい」(あごう)。欧州では、無名だが有望な劇団に無料で劇場を貸し出し、実際の舞台で作品を作り込ませる手法も多く見られる。「いずれはこうした環境も整えたい」とも言う。

 あごうはアトリエ劇研で、年会費3万円を支払えば同劇場や、こまばアゴラ劇場(東京・目黒)など提携劇場の公演を自由に鑑賞できるユニークな会員制度を創設した経験を持つ。新劇場でもこうした会員制度や様々な形での企業協賛、劇場の建物を使った家賃収入など新たな収益源を作り、創造環境の整備に役立てたい考えだ。

 ビジネスマン向けの演劇に関するスクールの準備も進める。経営者・詩人で多くの文化事業でも知られた故堤清二に関するレクチャーなど、経済人と演劇の距離を縮める試みだ。ゆくゆくは、劇場を支える支援者に育ってもらいたいとの狙いもある。

■住民と距離近く

 一方、同じく京都が拠点の劇団「地点」も、21年をメドに150席程度の劇場開設を目指す。候補地数カ所の選定を終え、資金や運営面の協力企業を募り始めた段階だ。

 地点は13年から拠点「アンダースロー」を京都市で運営してきた。レパートリー作品の上演や稽古場として使うほか、海外劇団が日本で公演する際のスタジオとしても提供。上演後は劇団員と観客、地元住民らが酒席を囲んで語り合う場にもなっている。

 アンダースローの運営を通じ、地域住民との交流や海外客の呼び込みといった経験を培った。劇場新設の狙いを劇団代表の三浦基は「劇場文化の醸成」と話す。現状では「演劇ファン以外には現代演劇との距離が遠い」。しかし地域に根ざし、地域に開かれた劇場が生まれることで「その距離が縮まることで観客が育ち、演劇のレベルも上がっていく」

 あごうも地域住民との連携に大きな労力を使う。アトリエ劇研は演劇界では全国的に有名だったが「地元の人たちが多く通っていたわけではない。時には騒音の問題などで緊張関係もあった」と振り返る。新劇場は上演作品を「地域の人々が日常的に見に来るような風土を醸成したい」との思いがある。

 舞台芸術の発展は盤石な拠点あってこそ。「新劇場は100年続いてほしい」と、あごうは述べる。劇場を演劇人や演劇ファンだけの閉じた空間にせず、地域・社会に開かれた場にする。そうした志をどれだけ具体化できるか。それが新劇場の一つの試金石になりそうだ。

(大阪・文化担当 佐藤洋輔)

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